普通の能力の会社員が出世する1つの方法
私は学校を終えて就職した会社で会計課に配属されました。1970年代 前半のことです。その会計課には10人ぐらいの社員がいました。その中で 2人の方(かた)が取締役にまで出世しました。社員が5、000人もいる 上場企業でしたから、10人から2人というのはかなりの高い率です。
2人の内の1人の方、Tさんが取締役にまで出世したのは、なるほどなと 思うところがありました。その方は、お父さんが県議会議員という育ちの良い 方で、学歴は有名な W大学出身です。達筆でした。1990年代にパソコンが 普及するまでは、達筆は会社員としてとても大きな力でした。
活字印刷するのは決算書のように外部に出す特別の文書だけで、支店や工場に 出す文書などはすべて手書きでした。その方は、のびのびとした力強い美しい 字を書くのでした。少年時代にしっかりした書道教育を受けたことが想像され ました。もちろん会計の仕事はよくお出来になります。
そして、性格は温厚でした。この「温厚」ということが大切です。会計課長も 優秀な方で、学歴などは、 W大学よりもっと高く、やはり達筆でした。そして、 自他ともに認める頭の良さを誇っていました。しかし、性格が粗いのでした。 時には、ご自分の頭脳の優秀さを鼻にかけて、大きな声で人を罵(ののし)る のでした。
会計課長は、地方の支店長など、それなりの出世はしましたが、取締役には、 はるかに遠いところで終わったのでした。仕事の能力などが同じならば、 最後には、「温厚な性格」が力を発揮するのだな、としみじみ思わされます。
( Yさんには特に際(きわ)だったところは無いのだった )
ところで、取締役にまでなった2人の内のもう1人の方、Yさんは、学歴、 能力、性格、など普通の方でした。Tさんのように際だったところは 無いのでした。それにもかかわらず、取締役まで出世したのです。生まれ育ち が東京でしたので、地方出身の私などに比較し要領はよいのでした。しかし、 会社の中には、要領のよい方は他にいくらもおられました。
Yさんの優れたところは、人を見る目と素直な心があるところでした。Yさんは 同期の Aさんをとても慕っていました。そして、その慕い方(かた)には 尊敬心が含まれていました。
Yさんは Aさんを「 Aさん」とさんづけで呼んでいました。一方、Aさんは Y さんを「 Y 」と呼び捨てにしていました。同期の方たちなのに、聞いていて 自然でした。私より5年ぐらい先輩の方たちでした。
( Yさんは Aさんを心から尊敬し、慕い続けたのだった )
そして、長い年月が経って Aさんはその会社の代表取締役社長になりました。 それからしばらくして、Yさんは取締役に引上げられたのです。長い間に色々な ことがあったと思いますが、Yさんと Aさんの親密な関係は続いていたのです。
私は、学校を終えて、その会社に入ったのでしたが、途中で退社して転職し たのでした。しかし、インターネットの時代になって、退職した会社の 取締役人事をホームページから知ることができるのでした。便利で良い 時代になったものです。
Aさんは、その後、長く社長を務め会長にもなって、その会社の押しも押 されもせぬ文字通りの実力者になって君臨したのでした。
特に際(きわ)だったところがあるわけでも無く普通の会社員であった Yさん が取締役にまで出世したのは、明らかに実力者 A社長との関係で引上げられた わけです。
もちろん Yさんは一生懸命に勉強し仕事をしたでしょう。しかし、それだけ では、とても取締役にまで出世はできません。若い時代から Aさんの才能に 着目し、同期でありながら 心から自然に Aさんを尊敬し慕い続けたという その心がけが、Yさんを一部上場企業の取締役にまで押上げたのです。
「心から自然に 」というところが大切です。このようなことは、作為的な 言動はすぐに分かられてしまうからです。
( 会社で出世すると質の高い大きな仕事ができるようになる )
過度な競争などの無理は良くありませんが、基本的に会社で出世するのは 良いことです。会社では、高い地位になるほど見晴らしがよくなり、質の高い 大きな仕事ができるようになります。もちろん収入も高くなります。
私は30代に転職し、その転職先の会社で50歳を超えて、やっと課長と いう管理職になりました。末端の管理職ではありますが、それでも仕事の質 はそれまでとは大きく違うのでした。
会社員になりましたら、若いときに、将来、大出世しそうな方(かた)を 見つけて素直に心から尊敬してお付合いをさせていただけますと、ご自分も 出世して質の高い、大きな仕事のできる地位になれる可能性があります。
会社に入社して、仕事に慣れて心に余裕ができたら、周りを見回すと良い
です。将来、社長になりそうな、心から尊敬できる才能のある方が、意外と
身近な所におられるかもしれません。
(了)