(2016/10/19)

(前頁より続く)

労働基準法、三六協定を考える(2止)

私が学校で学んだことの一つに「資本主義経済の歴史」がありました。 資本主義経済がこの世に生まれて成長すると、資本主義経済のマイナス面が 表面化してくるのでした。

企業は利益を上げるために、労働者を過度に酷使してしまうのです。労働 者は疲弊してしまいます。労働者は労働ができなくなってしまいます。また、 過度に酷使された労働者は企業に反抗し、社会不安が起きてくるのでした。

そのままにしていたのでは、資本主義経済は崩壊してしまいます。この 対策として、労働基準法を始めとする労働法が立法、施行されたのでした。 労働法は労働者保護立法です。市民法の基本である民法は、経営者と労働者 を対等の存在として扱います。法的に対等な経営者と労働者が雇用契約を結ぶ、 と考え規定します。

しかし、経済的には経営者の立場は強く、労働者は弱者です。そのままに しておくと、企業は利益を上げるために、労働者の過度の酷使が発生してし まうのです。

これを防ぐために、民法の特別法として労働法が立法、施行されて、経営 者と労働者を実質的に対等な関係にしようとしたのでした。

( 労働法の存在が忘れられているのではないか )

特別法である労働法は、民法に優先して雇用関係に適用されます。しかし、 近頃は、「資本主義経済の歴史」の教訓や「労働法の存在」が忘れられてきて います。

広告業界大手、D 社の入社1年目の社員が1カ月の残業100時間という 過剰残業の末に自ら命を断ちました。報道されていることが真実とすると、 この D 社はとてもまともな企業とは思えません。

私は、ネットで D 社の情報を見てみました。そして、「うーん。」と唸 りました。「社員の○○○○」、「鬼○則」のようなものを読むことができま した。しかし、現代の日本において、こんなことを経営者が本気で言っている 企業が存在するのか、と思いました。しかし、どうも本当のことのようです。

経営者ともあろう方(かた)が、よくこのような剥き出しの利益追求のみのものを 堂々と躊躇(ためら)いもなく言っているなあ、と感じました。資本主義経済が発生 してまもない頃の企業のことのようで、読んでいるこちらが困惑してしまいます。

( 会社員は誰でも労働基準法を学ばなければならない )

普通の学生がこのような企業に入ったら、とても持たないだろうな、と思いま す。しかし、入ってしまったら、その人はどうしたらよいのでしょうか。急いで 労働基準法を勉強をすることを勧めます。勉強の手段は国家試験のテキストが良 いです。労働衛生の国家試験である第2種衛生管理者試験テキストの労働基準法 の章を読むのです。

私の手元にある次の本では、労働基準法の章は約40頁(55頁〜94頁)ですが、 しっかり纏(まと)まっていてこれだけで,労働契約、労働時間、時間外労働など、 労働基準法の趣旨、骨格を掴(つか)むことができます。

「まるごと覚える第2種衛生管理者 ポイントレッスン 」
監修者 塩野昭一 編著者 一般財団法人 日本経営教育センター
2015年10月15日発行 新星出版社

(注:法律は改正されることがあるので、労働基準法の勉強は新しいテキストを 使うほうがよいです。右サイドに良いと思われる、新しい入門マンガと基本テキスト を広告しました。2022/11/4)

そして、必要があれば、後日、もっと詳しい勉強をすればよいわけです。法学部 の学生でもないかぎり、労働法を学ぶ機会がないまま会社に入ります。私もそうで した。しかし、会社に入れば誰でも労働者として労働基準法の適用を受けます。

自ら命を断ってしまった D 社の入社1年目の社員は文学部のご出身ということで 労働基準法の素養は無かったと思います。会社の中には、長い年月の中で作られた 色々の悪しき雰囲気というものもありますので、労働基準法の素養さえ身につければ、 簡単にどうにかなるというものではないことは私も長年の会社勤めで身にしみて分 かってはいます。

しかし、この方が第2種衛生管理者試験テキストの労働基準法の章を読んでいれば、 それだけで、少なくとも最悪の事態は避けて、別の対応ができたかもしれない可能性が あったのではないかと思うのです。残念なことです。

会社員として仕事をして生きることは厳しい面があります。会社員の方は自分を守る ために、どなたでも最低限、一般教養として労働基準法の素養を身につけていたいものです。 そうすれば、会社の中から、過度に過酷な労働環境が無くなっていくと思うのです。それは、 当然、会社にとっても良いことです。

(了)