(2016/7/20)

会社で苦しくなったとき、(時には流されるままに)

私が働いていた職場に、ある年、途中入社されて来た方(かた)がいまし た。その方はある大企業の出身の方でした。

それから、ある会社に転職し、そして数年して、私が勤めていた 会社の実力者の方に気に入られて再転職して来たのでした。

そして、かなり強引ではありますが、伸び悩んでいた事業を急激 に拡大したのでした。さすがに、実力者の方に気に入られるだけの ことがありました。

しかし、そういう時、周(まわ)りの方たちは大変です。やり方が強引な だけに、どなたも対応に苦慮するのでした。私も当然苦しくなりました。

( 請求書の作成に使っていた機械を片付けられる )

ある日、出勤すると私が請求書の作成に使っていた機械が見当たらなくなって いました。再転職して来た方と一緒に来た部下の人が片付けたというのです。 会社の事務を刷新(さっしん)するためということでした。

私は,その部下の人に「これからは請求書はどのようにして作るのですか。」と 尋(たず)ねました。その部下の人の答えは、「請求書って何ですか。」という ものでした。

私は、機械が片づけられた場所を聞いて、地下のゴミ捨て場所のような所に取りに いきました。会社に勤めていながら、新入社員でもないのに、請求書も知らないという、 その部下の人の無知と独断が、情けないやら、腹が立つやらで、私はグッタリしました。

しかし、何といってもバックに実力者の方のご支持がありますから、 誰もどうしようもありません。

そうしたある時、どなたかが 「会社勤めをしていると、状況に流さ れているしかない時があるものだよ。」とおっしゃいました。

私は、それを聞いて、そうだなと思いました。気持ち的に救われま した。それから、しばらくは、ただ流されるように仕事をしていまし た。

そして、実力者の方に気に入られたその方は仕事が一段落すると、 これからの事業の方向性を見出すためにということで、取巻きの人 たちと欧米一周の視察に出かけられました。

すごい人でした。私などから見ると天才です。その後、その方は その職場で中心になっていた何人かをその職場から追放しました。私 も追放された 1人でした。

( 天才的な方の身の上が急転直下したとき )

しかし、その方に不運が訪れました。ご不幸にも実力者の方がご病気で 急逝なさったのです。お若いときから奮闘して仕事をなさってきた方ですから体に 疲労が蓄積されてしまったのだと思います。

こうなると、その天才的な方の身の上は後ろ盾を失ったのですから 急転直下します。

どうなさるのかな、と思っていたら、すごいのです。再び、別の 会社の実力者の方に気に入られて再々転職されていったのです。

私は地道に一生懸命に仕事をするしかありません。多くの方もそうだ と思います。

しかし、その方は会社の実力者の方に次々と気に入られて、軽々と良い条件 で転職していくのでした。本当に羨(うらや)ましいことでした。

このように生きられたらいいなと思いました。会社員の中には 天才会社員としか言いようのない方がおられるのでした。

( 人の運命は分からない )

但し、ご本人はその才能で軽々と生きていかれますが、仕事の進め方が 強引なだけに、この天才的な方に気に入られて深く係わった方たちは、もしかしたら、 その後が大変だったのかもしれません。

この方が急拡大した事業は、やがて萎(しぼ)んでいき、ついには事業ごと売ら れてしまったからです。

人の運命は分からないものです。あの時、ある方がポツリとおっしゃた 「会社勤めをしていると状況に流されているしかない時があるものだよ。」と いう言葉がしみじみと思い出されます。

(了)