(2018/12/1)

現場経験の無い経営者の危うさについて(2止)

(前頁より続きます)

国内におけるフィージビリティ・スタディも難しいのですが、外国における フィージビリティ・スタディは、当然のことですが、言葉や文化の違いなどがあって 一層困難を伴うのでした。

私が勤めていた会社の海外展開のスピードを考えると、果たして必要な フィージビリティ・スタディをやっているのだろうかと私は不安を感じました。 いわゆるイケイケドンドンになっているのを感じたのです。

企業は、どの国とも仲良くやっていけるのが理想ですが、外国の中には色々な理由で 日本に強い反感を持っている国もあるようです。私が勤めていた会社は、やはり、 そのような日本に強い反感を持っている国で展開した事業から問題が起きて来たよう です。

日本での経営方針と矛盾する真逆の経営方針がその国で展開する事業所から示されて いたのです。「一体どうなっているんだ。」と国内の消費者から反感と疑問が出され たのでした。

外国で起きた問題とはいえ、現代はインターネットの時代です。そのような良くない 情報は驚くような速さで国内の消費者に広まってしまいます。良くない情報は、 当然、売上に悪い影響を与えます。

( 企業の海外展開にはフィージビリティ・スタディが不可欠です )

企業の海外展開は慎重なフィージビリティ・スタディの段階を経ることが必要です。 国内の市場が満杯になったからという単純な思い込みだけの理由で、 フィージビリティ・スタディをしないままで、短絡的に次は海外市場に展開だという のでは大きな失敗の落とし穴が待っています。

海外への急激な事業展開は、メガバンクの大銀行から天下ってきた人が言い出して 始めたことですが、銀行マンというのはお金だけを扱ってきているため、個人差は あるでしょうが、総じて経理部から出てくる財務諸表のお金だけを見ていて、考えが 表面的で浅いように感じられるのです。

色々な理由で、銀行から天下って来る人を受け入れる会社は、銀行マンの爽やかな 弁舌の裏に隠れている、お金にしか目が届いていない浅い思考に十分な注意が必要 です。

そして、上記の現場経験の全く無い人が社長になったため、消費者や市場に関する 感度が鈍く、すべての良くない事を更に推し進めてしまっているように思われるのです。

( 現場経験の無い社長は他人(ひと)の話に耳を傾ける )

このトップの方(かた)は、これから消費者や市場に関する肌感覚(はだかんかく) の感度をアップするために努力していただきたいものです。そのような感覚は、自覚 して謙虚な心になって、他人(ひと)の話に一生懸命に耳を傾けることで得られると 思うのです。

若い時の現場経験がありませんので大変なことだとは思うのですが、せっかく社長に おなりになったのですから、この会社で一生懸命に働いている、私もよく知っている 方達(かたたち)のために、現在起きているマイナスの事柄を乗り越えて、再び輝い ている会社にしていただけるように心から願うものです。

私は、会社の中の階層のズッと下の方で、主として会計実務に従事してきました。 正しい会計処理をするためには、会計知識だけでは不十分であり、営業や製造の 実状を知っていなければなりません。

そのためには、営業や製造の担当の方に現在の実状について話をよく聞かなければ いけません。自分で営業や製造をすべて実体験するわけにはいかないからです。

若かった頃は、その聞き取りが、なかなかうまくできずに苦労したものでした。 そのような事に関して参考になる本もあまり無いのです。そして、ある時、次の本を 読んだのです。

聞き取りの作法、小池和男、2000年、東洋経済新報社

著者は大学の経営学者ですが、ご自分の専門である人事労務管理の研究のために企業 に行って、担当者から実情を聞き取るのでした。そして、その聞き取りによって 得られた知識を基に実証研究を進めて、それまでの固定観念となっていた定説を覆 (くつがえ)して、いくつもの大きな経営学の業績を上げられたのです。

( 他人(ひと)にものを聞くときの心の姿勢を学ぶ )

「聞き取りの作法」では、どうしたら企業への聞き取り調査がうまくできるのかという 問題について、ご自分の苦しく辛い体験を踏まえて書いていました。著者と私とでは 仕事が違いますので、テクニックのようなものは参考にはなりませんでしたが、 何よりも私はこの本を読んで、他人(ひと)にものを尋ねるときの大切な心構えを 教えられたのでした。

他人(ひと)に真実を話してもらうためには、聞き手である こちらの心の姿勢が根本的に大切であることを教えられたのでした。

それから、私は正しい会計処理をするための聞き取りが少し上手になったのでした。 そして、それまでよりも会社の実状を踏まえた正しい会計処理ができるようになった のでした。

上記の現場経験の無い社長の方は、間接部門のご出身ではあっても、私が勤めた 会計部門とは異なり、仕事柄、会社の現場の人に対して「教えてあげる」という、 いわゆる上から目線の姿勢を取っている部署の方でした。

それだけに一層、「聞き取りの作法」を読んでいただいて、他人(ひと)様にものを 尋ねるときの大切な心構えを学んで経営に生かしていただき、現在の会社の苦境から 脱していただきたいものです。

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(了)