(2018/10/1)

若い人は上司の嫉妬心に気をつける(1)

今年4月に会社に入社した新入社員の方(かた)も半年が過ぎて、新しい 環境にも慣れてきて、落ち着いてきたことであろうと思います。この時期 になりましたら、気をつけないといけないことがあります。それは上司の 嫉妬心です。

新入社員のあなたから見たら、上司は会社の先輩で仕事もできて光り輝い ていて、まさか若くて仕事もまだあまり出来ないあなたに嫉妬心を持つ など考えられないことでしょう。しかし実は、あなたのその若さが危ない のです。

私が大学を終えて会社に就職したとき、上司から妙に冷たくされたことが ありました。その上司は、自営業を営む富裕な家に生まれ育ち、旧商科大学 の流れを組む有名な国立 H大学のご出身です。そして、その大学で著名な B教授のゼミに学び、ボート部で活躍したことがご自慢でした。

地方の貧しい家に生まれ、比較的学費の安い私大をアルバイトで食いつなぎながら、 やっと卒業した私などに比較し、お育ち、学歴、仕事の有能さ、など あらゆる点で天と地の差でした。

しかし、今、思いますと私はただ一つの点だけでは上司から嫉妬されていた のです。その上司は、その頃まだ 30代半ばだったのですが、既に頭の毛が ほとんど無いのでした。その上、身長155pぐらいと低く、しかも肥満体 でした。

一方、私は身長は普通で、中学、高校の運動部の部活で鍛えて筋肉質の細身 でした。特に、髪はフサフサに盛上がって、毎朝、出社前に髪を整えるのに 苦労するほどでした。私は自覚がありませんでしたが、上司は私の見た目に 強く嫉妬していたのだと思います。

( 50代になって上司の気持ちが分かったのだった )

その事に気づいたのは、ずっと後になって、私が50代になり管理職にな った時でした。その頃、私も年齢相応に情けないほど髪がペラペラと薄く なり、しかも中年太りの肥満体でした。

床屋に行って散髪すると頭の地肌が見えるので、床屋に行くのを先伸ばし したりしていました。その私の下に新入社員が配置されたのです。中年太り で髪の薄い私から見ると、その新入社員は輝いていました。

特に最近はやりのイケメン君と言われる青年ではありませんでしたが、 私が既にすっかり失ってしまった若さがその新入社員には輝いているので した。

その時、遅まきながら、私が新入社員だった時の上司の気持ちが痛いほど分か りました。嫉妬心は人間の悪い心の中で最も克服しがたいものであると言わ れます。もちろん個人差はありますが、一般的には、まだ世慣れない若い方 (かた)が思っている以上に、嫉妬心は押さえがたいものなのです。

仏教の方(ほう)で厳しい修行をして徳の高い高僧となった方(かた)でさえ 「私は晩年になっても他の高僧の良い評判を聞くと嫉妬心に苦しんだ」と 告白したそうです。それほどまでに嫉妬心は制御が難しいのです。

上司の頭の毛が薄かったりした場合、新入社員の方(かた)は十分気をつけ なければいけません。私は上司の見た目に、もちろん触れたことはありませ んが、無自覚でしたので何かの時に不用意に傷つけたりしてしまったのかも しれません。会社では、お酒の席もありますので慎重さが必要です。

( 武士の月代(さかやき)の意味について )

私は時代劇が好きなのですが、時代劇の中では、お城勤めの武士はみんな チョンマゲ姿です。そして、頭の上の部分の月代(さかやき)を剃っています。 以前、外国人の方が書いた本を読んでいましたところ、「月代を剃った チョンマゲ姿のヘアースタイルは、頭の毛が無くなった老人に、若い人が 媚びたヘアースタイルである。」という記述がありました。なるほど、 と思いました。

私は時代劇を見ながら、月代を剃ったチョンマゲ姿の意味を考えたことはあり ませんでしたが、言われてみると、そういうことかと納得させられました。 狭い島国の日本では人間関係から来るトラブルを防ぐ工夫が大事なのです。

会社に入った新入社員の方は、日本の多湿の気候にふさわしいようなジットリ とした日本人の人間関係を感じておられることと思います。月代を剃った チョンマゲ姿のヘアースタイルは、年齢差から来る嫉妬心のトラブルを緩和 するための工夫だったのです。言葉を換えると、われわれ日本人は、 侍(さむらい)の時代には月代を剃ったチョンマゲ姿のヘアースタイルを生み だし、社会に定着させるほどに嫉妬心の強い民族であるということです。

明治時代からは西洋に合わせて、月代を剃ったチョンマゲ姿は無くなりましたが、 我々日本人の内心の嫉妬心の強さは不変でありましょう。狭い島国に生きる 民族の宿命なのかもしれません。

現代の会社員が、この強い嫉妬心にどう対応するかは人それぞれになろうと 思いますが、島国ということから来る、そのような状況を認識しておくことは、 会社勤めをする上で大事なことだと思うのです。

強い嫉妬心は強い競争心を生みます。強い競争心は良い面もありますが、 マイナスの面も大きいのでした。会社の中では、自分の出世のため、あるいは 自己保身のためなら、どんな汚い手も使う人がいました。しかし、これは大人 (おとな)の世界ですから、こういうこともあるかな、やむを得ないなという 感じです。

( 強すぎる競争心は学校の世界に暗い影を落とす )

しかし、日本では強すぎる競争心が学校の世界に暗い影を落としているように 思われます。私は18歳のとき、働き先の人に薦められた大学に進学しました。 学費が安くて貧しい私には合っていました。

私は経済の勉強をしたかったので、経済学部に入って勉強したのでした。その 働き先に、明治時代の有名な政治家が創立した、入学試験の大変難しい W大学に 入りたいということで4浪している人がいました。私はその人に「 W大学の 何学部に入りたいのですか。」と聞きました。その人は「 W大学なら学部 なんてどこでもいいんだよ。」と答えたのです。私は不思議な答えだと思いま したが、その人は逆に「おかしなことを聞く奴(やつ)だな。」という雰囲気 でした。

ここまで来ると強い競争心が虚栄心にまでなっていると思われるのです。新聞 の人生相談などで「大学受験に失敗して落胆しておかしくなった」という話を 読むことがあります。実は「大学受験に失敗する」ということの意味が私には、 正直なところ、分かりません。

( 現代は勉強の環境が整っている )

例えば、経済を勉強したいのであれば、現代の日本であれば、自分が入れる 大学の経済学部に入って勉強すれば良いわけです。今から50年前の私の 大学時代の頃は、経済学といいましても宗教の教義(ドグマ)のような文章を 延々と書いているようなものや、そうでなければ数式を延々と並べているだけ のような安易なものが多いのでした。

その頃とは違い、現代は優れた経済学の本が多数出版されています。勉強の 環境が整っています。最近、私は、「スティグリッツ入門経済学第4版  藪下史郎他訳 東洋経済新報社」を読みました。この本を読みますと、 トレードオフ、インセンティブといった経済学の基礎概念から始まって、現代の 経済学が一通り(ひととおり)分かるのでした。

長年、会社員として現実の経済の中を生きてきた者からみれば、経済学とは 経済の一般論なのだと思います。経済の一般論としての入門レベルの現代の 経済学を理解した上で、会社員は現実のヘドロのような経済の中をどう生き抜く かが問われるのだと思います。

(次頁に続きます)

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