(2019/4/1)

消費税10%時代を生きるー晩酌をやめる(2)ー

(前頁より続きます)

そして、 M氏は歳を取って経営者を引退した後、松下政経塾を作って 政治家を育てようとしたのです。 M氏は政治を憂えて、心の底から真面目に優秀な 政治家を育成しようとしたでしょう。しかし、結果的には老人となった 経営者の困った道楽になったのでした。

M氏は企業経営で大成功し、経営の 神様と言われて、自分は何でもできるという万能感を持ったのでしょう。しかし、引退した 経営者が松下政経塾のような政治学校を作って、優れた政治家を育てるというのは無理が あります。

政治は世の中に大きな影響を持っており、引退した老経営者が安易に手を出しては いけない世界だと思うのです。結局、松下政経塾は野田前首相のような政治の世界 には不適切な、口がうまいだけの政治家を生みだしてしまったのです。

哲学者のカントが「人が大きな失敗をするのは、自分の専門分野で大成功して 驕(おご)りたかぶった時に、自分の専門外のことに口を出すときである。」と 言ったという話を若い時読んだことがあります。

企業の経営に関しては極めて有能で偉大な経営者であった M氏は引退後に カントが言った通りの大失敗をしたのです。 M氏の政治に関する浅知恵の 発言を厳しく戒(いまし)めた人がいました。1980年の頃に週刊誌で「風」と いう匿名で書評を書いていた百目鬼恭三郎(どうめききょうざぶろう)です。

M氏は「日本は土地が狭いのが問題である。この問題を解決するには富士山 を削って、その土で海を埋め立てて土地を作れば良い。」と書いたのです。その時、 百目鬼恭三郎は「地理を習ったばかりの中学生のようなことを言うもんじゃない。」 と M氏を厳しくたしなめて叱ったのでした。全く百目鬼恭三郎の言うとおり です。

結局、企業の経営ではあれほど優れた偉大な人なのに、経営以外のことでは中学生なみの 知力の M氏は、引退後に野田前首相のような口がうまいだけの、国民にとっては困った 政治家を作ってしまったのです。

( 無知と悪の系列が消費税10%という状況を作った)

そして、M氏、野田前首相、財務省官僚、という無知と悪の系列というか、 トライアングルが消費税10%というとんでもない状況を作り出してしまったのです。 M氏は百目鬼恭三郎の戒め(いましめ)を素直に聞いて、最後まで偉大な経営者 として生きて、引退後に政治学校を作るようなことをしないで欲しかったもの です。

引退後のヒマつぶしとしては、慈善事業など世の中に有益なことで、本職で 大成功した老人にふさわしいことがいくらでもあったことでしょう。

もっとも最近は M氏だけでなく、政界の大成功者である元首相達が、歳を 取って政界を引退した後も、国民に求められてもいないのに現在の政治に色々と口を 出して世の中を乱します。

コンピュータが大きな役割を果たしている現代社会について何も知らずに、唐突に 思いつきでサマータイムを言い出す元首相や、5年間もの首相在任中全く言わなかった 原発のことを白い髪を振り乱してあっちこっちで言い回って、立派な政治家に成長 した息子さんの足を引っ張って迷惑をかけまくっている元首相もいます。そうかと 思うと外国にまで行って国民が迷惑するような言動をする元首相までいる始末です。

要するに、この元首相達は現役を引退し老人になったらヒマで何もすることが無く 退屈に苦しんでいるということなのでしょう。そして、たまに思い出したように マスコミの記者が訪ねて来ると、うれしくてうれしくて、あること無いことしゃべり まくるのでしょう。

そして、マスコミの記者はそういった元首相のヒマつぶしの話を埋め記事(空いた 紙面を埋める記事)などに使えるので、WinWinの関係なのでしょう。しかし、 位人臣(くらいじんしん)を極めた元首相なのですから、そんなことをしないで昔の 立派なご隠居のように高尚な趣味などを見つけて打ち込んで欲しいものです。そうし ませんと、在任期間の長い現首相に対する元首相の嫉妬心に見えて、こんな人が首相 だったのかと、国民としてガッカリさせられてしまいます。

( 酒税は集落の皆に恐れられていた)

さて、話を戻しましょう。同じ集落の人が「酒税が来たぞ」と言って去っていった後、 恐怖の表情を浮かべてジッと立ちつくしている母に、私は「なぜお酒を作ってはいけ ないのですか。」と聞きました。母は困ったような顔をして、しばらく考えてから 「体に悪いんだろうか。」と言いました。これが、私と税金との最初の出会いでした。

その後、学校を終えて会社で働き始めたとき、私は法人税という税金に出会いましたが、 その時の体験は、また別の機会に話したいと思います。

いずれにしましても、私は「酒税」というのはよく分からないが、何か恐ろしい化け物 のようなものなのだというイメージを子供心に持ったのでした。私が生まれ育った ところは方言の強い地方でしたので、「酒税」は「スゾー」と発音されていました。 「酒税が来たぞ」は「スゾーが来たぞ」となるのです。そのため、何も知らない子供には、 その恐ろしげな「スゾー」という発音から、ますます気味の悪い化け物のようなものが 心に浮かぶのでした。

( 酒税は大昔からの農村のお酒を作る文化を破壊した)

もちろんこの時、私の集落に侵入して来た「スゾー」と言われて集落の皆に恐れられて いたものは税務署の酒税係だったわけです。そしてその後、「どこそこの家で「どぶろく」 が見つかって捕まったそうだ。」と大人達の間でヒソヒソと話されて、家でお酒を作ると いうことはできなくなっていったのです。

こうして、いつの頃からか分からないほどの昔から代々、農家の主婦達の間で一生懸命に 工夫されて、母から娘に熱心に引継がれてきた「どぶろくを作る文化」は酒税によって 完全に破壊されたのでした。農家の主婦達のどぶろくを作る技能が完全に否定されたのです。

私の母を含めて彼女たちはどんなに辛く悲しかったことでしょう。人は自分の能力を否定 されることほど辛いことはないからです。そして、一度破壊されたものはもう二度と 蘇(よみがえ)ることはないのです。

なお、その頃は母は味噌や漬け物なども家で手作り していました。今から振返りますと、それらの食べ物は日本の長い歴史の中で、農家の 主婦たちによって代々磨き上げられてきた混ぜ物の全く無い本物の食品なのでした。私は、 成長期にそのような本物の食品を食べて育ったからでしょう、会社員になってから朝から 夜まで毎日厳しい仕事をしてきたのですが、病気らしい病気をした経験は無いのです。

そして現在は、そのような、昔は誰もが普通に食べていた本物の食品は入手し難くなった ように思われるのです。

(次頁に続きます)