(2023/3/1)

定年後の仕事ーマンション管理員ー

私は、60歳で定年退職した後、まだ働こうと思って仕事を探しまし た。しかし、どの仕事も失業手当よりも給料が安いのでした。失業手当 の支給が終わったところで、私は定年前の経験を生かそうと思って経理 の求人を探して応募しました。

しかし、何件応募しても何の反応もありませんでした。書類審査が通ら ないのです。その時は、リーマンショック大不況の後だから採用されな いのだろう、と思いましたが、色々調べますと定年退職後の再就職は いつの世も厳しいのでした。年齢が高いため、はねられるのです。

私はあきらめて経理以外の求人を探しました。そして、マンション 管理員の求人に応募して、採用されました。2009年のことです。 定年になって半年が過ぎていました。

この時、健康診断がありました。健康診断票の「医師の診断・意見 および就業上の注意事項」に、「尿タンパク陽性です。再検査が必要で す。高血圧です。経過観察を行ってください。勤務に支障なし。」と 書いてあります。

尿タンパク陽性というのは初めて聞く言葉です。インターネットで 検索しますと、「健康診断では、採取した尿に試験紙か試薬を使って 判定を行います。腎臓になんらかの問題が生じて、正常な状態よりも 多くのたんぱく質が尿に含まれることがあります。尿蛋白が陽性(+2) 以上の場合には、腎臓の病気が疑われ、二次検査(再検査・精密検査) が必要となります。」とあります。

私の検査値は「+」でした。(+2)以上ではありません。そして、 インターネットの検索には「尿タンパク陽性」の原因として腎臓の病気 以外にストレスもあると書いていました。この頃、経理の求人に幾つ 応募しても何の反応も得られず、ストレスになっていたのかもしれませ ん。

高血圧のほうは、「最高138、最低92」でした。しかし、「勤務に 支障なし」ということで私は都区内のマンションで管理員の仕事を始め たのです。

( 居住者はいつでもゴミを出すのだった )

マンション管理員募集要項には、業務内容のところに、「受付、共用 部分の日常清掃、巡回点検、管球交換、警報盤発報時の初期対応、日報 作成等」とありました。なお、警報盤発報時の初期対応とは、ガス検知器 が鳴ったときの対応です。私が勤めたマンションは、わりとガス検知器 の誤作動が多いのでした。

しかし、問題はこの要綱には書いていないのですが、朝のゴミ出しでし た。このマンションにはゴミ庫があって居住者は、いつでもこのゴミ庫 にゴミを出すのです。

そして、管理員は、ゴミの種類毎に、回収車が来る日に近くのゴミ回収 場所に持っていかなければならないのです。近くといってもゴミの量が 半端ではなく、しかも生ゴミは重いのです。

世帯数約60世帯であり、年末年始の休み明けなどはゴミ庫が満杯にな っていて、出し終わった後、何日間も腰が痛いのでした。一番キツい 仕事は募集要項に書いていないのでした。困ったものです。

その頃、都内のマンションはおおむね、このようなゴミ出し方式でした。 マンションの売出しの時に「ゴミはいつでも出せますよ」が不動産会社 の販売トークになっていたのです。最近は東京周辺の県にも、このゴミ 出し方式が広がっているようです。

私は昔の古いマンションに住んでいたことがありますが、私が住んでいた マンションでは居住者が自分で回収車が来る日に指定された回収場所に ゴミを出していました。

管理員は、回収車が行った後で少し散らばったゴミを軽く掃除するだけで す。昔と今ではゴミに関する管理員の負担は随分違います。

マンション管理員を希望する場合は注意が必要です。マンション管理会社 の面接の時にゴミ出し方式を聞けるようなら聞いたほうがよいです。

( マンション管理員の役割は大きい )

マンション管理員になって分かったのですが、マンションの清潔、安全、 住みごごち、などはマンション管理員によって大きく担(にな)われて いるのです。それにもかかわらず、マンション居住者の中には管理員に対 して「金を払っているのだから」と不必要に下に見て横柄な態度をとる人 がいるのでした。感じが悪いのでした。

マンションには管理組合があり、1年に1度、総会が開かれます。総会 には管理会社の担当者も出席し、1年間の決算書を持ってきて居住者に 配布します。

その決算書には、管理員費用として30数万円が記載されていました。 この管理員費用には、当然のことですが、私への給料以外に管理会社の 諸費用、利益も含まれています。

ところが、居住者の中には管理員費用としての30数万円が全部私に 払われていると思っている人がいるのです。馬鹿な!そんなことがある はずがありません。

月〜金曜は8:00〜16:00、土曜は8:00〜12:00勤務で、 私がもらっていたのは月16万円でした。

そして、このマンションで1年半が経った頃、あの東日本大震災が来た のです。私が通勤に使っていた電車も原発爆発によって電気が来ない ため何日間か止まってしまい、私は電車が動いてから、やっとマンション に行くことができました。

ホッとして清掃の仕事をしていると、ある居住者がやってきて、 私に言うのです。「この何日間か来なかったのはなぜか。」私は「地震で 電車が動かなくて来ることができませんでした。」と言いました。

すると、その人は「そういう時は、管理会社に電話して代わりの人を 寄こすようにあなたが手配しなければダメだ。金(かね)を払っている んだからさ。」と強い口調で言うのです。あの未曾有の大震災の直後 です。都内の電車がみんな止まってしまったのは誰もが知っていました。

( マンション管理員は薄給である )

ふだん大人しい私も堪忍袋の緒がブッツリと切れました。私は「私が いくら金をもらっていると思っているんです。月16万円ですよ。」と 言ってしまいました。

すると、その居住者は「えッ、たったそれだけ。今度の総会でもっと 上げるように言っておくよ。」この居住者も、決算書の管理員費用 30数万円が全部私に払われていると思っていたのです。

そのような事があった後、私は、そのマンションの管理員を辞めました。 もっと続けようと思っていたのですが、勤労意欲というか、ここで 働こうという気持ちが無くなってしまって、体が動かなくなって しまいました。

このマンションの管理員になって1年7カ月が経っていました。 マンションの住みごごちは、管理員によって変わります。そして マンションの資産価値は管理員の仕事が影響します。

中には質の悪い管理員もいますが、多くの管理員は真面目です。 マンション居住者の方(かた)は、薄給で働いている管理員を大事に したほうが良いです。

(了)