(2022/11/1)

秋の晴れた日を楽しむ

今日は、よく晴れて、窓の外は秋の気持ちのよい陽射しで一杯です。 風もほとんどありません。なんという良い秋の日でしょう。

今日は水曜日(10/26)です。現役の会社員だった頃は、このような秋の日も、 私は会社で会計伝票を整理したり、書類の仕事をしていたりしたので した。とても忙しいのでした。

私は若かった頃、そのような日々に疲れていました。特に精神的に 疲れていました。このような環境から逃げたいと思いました。

その頃、ある本でイギリスの作家チャールズ・ラムのことを知りま した。チャールズ・ラムは、有名なシェイクスピアの作品を基に 「シェイクスピア物語」を書いて英文学史に名を残す作家だという のです。

経済学部で、イギリスのアダム・スミスは知っていましたが、 英文学のことは何も分かりませんでした。チャールズ・ラムは 英文学史に名が残るほどの作家だというのに、東インド会社に 勤める会社員で経理の仕事をしていた、というところに私は関心を 引きつけられました。

( チャールズ・ラムは会社員だった )

東インド会社という会社の名前は、世界史か何かの教科書で目に した記憶がありました。チャールズ・ラムには、「エリア随筆」と いう随筆の作品があるということを知り、随筆ならば私にも分かる だろうと読んでみました。

もう40年ぐらいも前のことですので、内容はほとんど覚えていま せん。覚えているのは、チャールズ・ラムほどの文学的才能に恵ま れた人でも、単調な経理や書類の事務仕事に耐えている。私の ような文学的才能ゼロの人間は、当然、単調な経理や書類の事務仕事 に耐えなければならない、と思ったことでした。

それから、チャールズ・ラムが東インド会社で勤続30年になった頃、 経営陣の人に呼ばれて「君は当社に長年勤務して会社に貢献してくれ た。これからは、生活できるだけの年金を上げよう。」と言われた ときのことでした。

その時、チャールズ・ラムは、「会社から解放される、この仕事から 解放される」と喜びで胸が一杯になったのでした。チャールズ・ラム のこの喜びは大学で英文学を研究している学者には、なかなか分から ない所かもしれません。

ここの所を読んで、私にも、「会社から解放される、この仕事から 解放される」日がいつか来ると思ったのでした。

チャールズ・ラムは、今から230年前に東インド会社に就職しまし た。それから30年勤務しました。芝居が好きで、休みの日などは 芝居をよく見ていました。

当時、ロンドンには芝居小屋がいくつもあり、芝居が上演されていま した。チャールズ・ラムがロンドンに住んでいた当時、ロンドンには 芝居の脚本書きが何人もいてシェイクスピアもその1人でした。

今はシェイクスピアは英文学の古典中の古典ですが、当時のロンドンでは、 シェイクスピアの作品は、庶民が芝居見物で気楽に楽しむ日常の娯楽 だったのでした。

( チャールズ・ラムは芝居が好きだった )

そして、シェイクスピアの芝居がとても面白い上に、その脚本 は時空を超えた人間の真実を表現しているとして英文学の最高峰になったの です。芝居好きのチャールズ・ラムは、仕事が休みの日などに シェイクスピアの芝居を数え切れないほど何度も見て、頭にすっかり 入っていたことでしょう。

それが自然に物語になって、「シェイクスピア物語」が生まれたのです。 私は英文学を学んだことはなく、チャールズ・ラムの 「シェイクスピア物語」を語ることはできないのですが、「自然に 物語になって、」というところが大事だと思うのです。

そのため、シェイクスピアを題材にしながら、シェイクスピアの原作 とは別の自立した価値があると言われています。会社の仕事に苦しんで いたチャールズ・ラムが気晴らしに見ていたシェイクスピアの芝居から 自然に出来てきた物語だからこそ独自の価値が生まれたのです。

そして、シェイクスピアの原作脚本は、役者によって演技されて観客に 見せられることが前提になっているのに対し、チャールズ・ラムの 「シェイクスピア物語」は、役者による演技を前提とせず、作品として それ自体が完全に自立した世界を構築しているところに深い意味があり ます。

その事が、シェイクスピアの原作脚本を基にして作られたにもかかわらず、 チャールズ・ラムの「シェイクスピア物語」自体が、英文学の古典と して英文学史に位置づけられている理由です。

秋の気持ちのよい陽射しを見ながら、若い頃に読んだチャールズ・ラム の「エリア随筆」のことを思い出したのでした。私の経験でも会社の仕事、 人間関係は凄(すさ)まじいほどの厳しいものでした。

チャールズ・ラムは、精神的に不安定な姉の面倒を見ながら、独身の ままで30年間東インド会社に勤務しました。英文学史に名を残すほど の文学的才能を持ちながら、会社で乾いた砂漠のような経理や書類の 仕事をする生活はどれほど辛いものだったでしょう。

今、会社の仕事や人間関係に苦しんで逃げ道が無いと感じている会社員 の人は、約200年前、ロンドンにチャールズ・ラムのような会社員が いたことを知るだけで、少しではあっても慰めになるかもしれません。

( 人生は思ったより短く、人の命ははかない )

最近、親類や近隣で、私と同じぐらいの年齢で亡くなってしまう人が います。そのような人の死に出会うと、人の命は、はかないものだ と思わされます。私も、あと何年生きられるだろうか、と考えてしまいます。

最近は、朝、起きるとき腰が痛いのです。インターネットで調べると、 年を取ると、夜、寝ている内に体の血流が悪くなることが原因だという のです。若い時は考えもしないことでした。70歳を超えると、私の体は 変わりました。

そのため、起きる前に布団の中で左右の足を貧乏揺すりの ようなことをして血流を少しでも回復してから起き上がるという工夫を しています。多少、効果があるようです。

それにしても、年を取ったものです。今日のような秋の気持ちのよい 陽射しの日に、これから何日出会えるだろうか、と思います。秋の 気持ちのよい陽射しの日に出会えたら、感謝してその穏やかな日を 楽しもうと思うのです。

(了)