自衛隊の元陸将と元海将の対談を見る
私は老人(75歳)になり仕事もなく暇ですので、よくテレビを見ています。 しかし、テレビばかり見ていますと飽きてきます。それで、テレビに飽き たらインターネットを見ます。すると、テレビではやっていない ような珍しいものを見ることがあります。
先日は、自衛隊の元陸将と元海将の対談を見ました。テレビでは 見ることのない対談です。テーマは、先の対米戦争(太平洋戦争) から二人が体験した防衛大学校の教育、自衛隊での勤務体験、など 私は初めて聞く話ばかりでした。それらの中から、印象の強かった 話を書いていきます。
戦後、海軍は評判が良く陸軍は評判が悪いのでした。この評判の 違いは、私も何となく感じていました。この違いの理由は、元陸将、 元海将によると学徒出陣にあったというのです。
学徒出陣は、大学生が徴収されて軍隊に入り戦場で戦ったのです。 この時、陸軍は大学生を一兵卒にして殴りました。一方、海軍は 大学生を将校にしたというのです。この差は大きいです。
陸軍に入隊した大学生は、戦後、陸軍を恨んで悪く言いました。 一方、海軍に学徒出陣した人は「海軍は良かった」と言うのです。
元陸将は言います。「海軍の特攻隊は可哀そうだ、とよく言われます。 しかし、南方の島に連れていかれて,食料も鉄砲の弾も補給されずに 最後は玉砕しろと言われて放置されて餓死した陸軍の兵士は、もっと 可哀そうだ。」
(広告)新品価格 | ![]() |
高校時代に使った日本史地図で、太平洋戦争(1941年における 日本の勢力図)を見てみます。北は樺太、千島列島、南はオーストラリア の近くのニューギニア、東はミッドェー島、マーシャル諸島、 西はビルマ、タイまで広大に広がっています。
アメリカに石油を禁輸された日本は石油が欲しかったから インドネシアまでは分かります。インドネシアは石油が産出するから です。しかし、なぜ上記ほど広大な地域に軍事勢力を拡大しなければ ならなかったのか、理解に苦しみます。
元海将は言います。「ゆきあたりばったり、なのです。軍事勢力 をできるだけ広げる。米軍が攻めてきたら、その都度、対応する。 一度、取った島はとにかく死守する。貧乏性なのです。戦略は無い。 一度、取った島は持っていたい。食料や弾薬の補給は考えない。 米軍が攻めてきたら戦って島を守れ。守り切れなくなったら玉砕せよ、 玉と散れ。」ということだったのです。
何ということだろう。元海将のこの話は本当なのだろうか。しかし、 日本史地図で太平洋戦争の日本の広がり切った勢力図をジッと見て いると、元海将の話は強い説得力を持って迫ってきます。本当のこと だったのです。
なぜ、このような事が起きたのか。元陸将と元海将によると、対米戦争 (太平洋戦争)のときの陸海軍の指導層の頭がクイズ王だったからだと いうのです。
当時、高級軍人を育成する学校は、陸軍士官学校と海軍兵学校でした。 どちらも競争率が高く入学が難しい超難関学校でした。しかし、試験の 内容は沢山のことを記憶して、試験の解答用紙に正確に書く、という 試験でした。そして、入学してからの勉強も沢山のことを記憶して 試験の解答用紙に正確に書く勉強でした。
こうして多くのクイズ王の頭の卒業生が作られ、陸海軍の指導層になって いった。その結果が、上記の「ゆきあたりばったり、、、」の戦争、 惨めな敗戦になったというのです。戦争は、次々と新しい状況が現れ、 失敗を分析反省し次の作戦を考えなければなりません。ところが、 クイズ王の頭の陸海軍の指導層は同じ失敗を繰り返すことしか できなかったというのです。
(広告)新品価格 | ![]() |
もちろん、記憶力だけの教育を受けても中には天才がいて優れた人がいます。 しかし、組織の中では、そのような天才もクイズ王の頭の人達に囲まれると、 押さえこまれてしまい、その天才を発揮できません。
元陸将と元海将は、「大きな組織を運営するにはトップ層はクイズ王の頭 ではダメであり、一定以上の知性、知力を持った人でなくてはならない」 と言います。そのような一定以上の知性、知力を持った人を多数育成するには どうしたらよいか、お二人で研究しているとのことです。本を出されていると いうことなので読んでみようと思います。
なお、元陸将と元海将によると東大法学部卒の現代の官僚もクイズ王の頭 であると問題提起しています。確かに、官僚はもちろん入学試験がとても 難しい慶大、早大、東大卒の現代の政治家もクイズ王の頭なのだと言われ ると、現代の政治の混迷もよく分かります。元陸将と元海将のリーダー 養成論に大いに期待します。
(了)(追記)
元陸将と元海将は言います。「日清、日露の戦争のときの軍の指導層は、 武士階級の人たちだから勝つことができた。」
確かに、陸軍の乃木大将も海軍の東郷連合艦隊司令長官も武士階級の人達 でした。決して、元陸将と元海将が言うクイズ王の人達ではありません。
なお、乃木大将の場合は、小説の創作によってその実像が歪められている、 という話もありますので注意しなければなりません。作家の筆力が優れて いるほど、実像が歪められて定着する危険があります。
対米戦争(太平洋戦争)のときの連合艦隊司令長官山本五十六の愚将論、 名将論という論を見ることがあります。しかし、考えるに、連合艦隊司令長官 山本五十六の愚将論、名将論は意味がないな、と思うのです。
日露戦争の時の東郷連合艦隊司令長官は、決戦となった日本海海戦で 旗艦三笠の船上に立って敵の砲弾に身をさらしながら戦いの指揮をとって 勝ったのです。
ところが、対米戦争(太平洋戦争)のときの山本連合艦隊司令長官は、 一度も戦場に出ないのです。いつも戦場のずっと後方にいて部下を戦わせる だけの人でした。そして、ミッドウェイで大敗して対米戦争(太平洋戦争)の 負け戦が決まると戦場視察と称して部下に敵の制空権の中を飛ばせて撃ち落さ れて死にます。道ずれにされた兵士は本当に気の毒です。
山本五十六は職業は確かに軍人でした。しかし、「戦う人」という意味での 軍人ではなかったのです。このような山本連合艦隊司令長官に愚将論、 名将論という論は成り立ちません。愚将論、名将論、以前の人です。
東郷平八郎連合艦隊司令長官と山本五十六連合艦隊司令長官の違いは、 元陸将、元海将が言うように、東郷平八郎は武士階級の人であり、 山本五十六は典型的なクイズ王の頭の人だったのです。

