(2018/5/13)

ICU とはどのような大学なのだろうか?

皇室の内親王のご婚約のことがテレビや雑誌で話題になっています。 その関連で内親王や婚約者の母校であるICUが取上げられることも あります。私は、ICUとはどんな大学なのだろうかと思いました。

私は、もう50年も前に地方から東京の私大に進学したのでした。 私は、実は高校3年になるまで就職志望でした。高校3年の夏休み が過ぎた頃、働きながら東京の大学に進学できるというポスターが 学校の廊下に貼り出されました。

私は、そのポスターを見て、大学進学を考え始めたのですが、 大学に関する知識が何もありませんでしたので、図書室で進学雑誌 を見て大学の情報を探しました。その時は、ICUという大学は全く 視野に入って来ませんでした。そして、私は働き先の人が面接の 時に「君はこの大学に入れると思うよ」と薦めてくれた大学に入学 したのでした。授業料の安い大学で、貧しい私には向いていました。

( ICUは超教派のキリスト教大学である )

ICU(正式名称:国際基督教大学 INTERNATIONAL CHRISTIAN UNIVERSITY)は日本がアメリカとの戦争に負けた4年後の1949年 に創立されました。ICUのホームページを見ますと、ICUは超教派の キリスト教大学ということです。私はキリスト教徒ではありません のでキリスト教については本を通して学んだのですが、西欧では 中世までは宗教の権威はカトリック教会でした。

そして、16世紀にドイツ人ルターがカトリック教会に対し反旗を 翻します。ルター自身、カトリック修道士であったのですが、彼は 「神による救いは聖書を通して得られる個人の信仰による」と 主張し、カトリック教会の教皇の権威を否定したのでした。

こうしてプロテスタントの歴史が始まります。プロテスタントとは 英語のprotestantであり、protestは「異議を申し立てる」、 そして、antは「〜する人」です。つまり、プロテスタントとは 「カトリック教会に異議を申し立てる人」なのです。この後、 カトリックとプロテスタントは宗教戦争と言われるほど激しい戦い を西欧で繰り広げます。戦いの激しさは、国によっては人口が半分 になるほどでした。

そして、プロテスタントは聖書の解釈の違いによって、いくつもの 多数の派に分れていったのです。私は若かった時、新約聖書の 四つの福音書を読んだことがありました。福音書には色々なことが 書いてありました。確かに、読む人によって「ここが一番大事だ」 と思うところは違って来るでしょう。更に、同じ所であっても読む 人によって意味の取り方が違うこともあるでしょう。ルターの ように、信仰の寄って立つ所を聖書のみに置けば、その解釈の違い によってプロテスタントが多数の派に分れていくのは必然です。

キリスト教は、このような非常に長い歴史を持っているわけなの ですが、国際基督教大学 教会(ICU教会)は様々な教派の クリスチャンが共に礼拝を守る超教派の教会だというのです。 歴史の中で考えの違いから色々な派に分れてきたキリスト教に 上記のような超教派のキリスト教がどのようにして成立できるの か、私には分かりません。

ICUの専任教員は規定によってキリスト者であることを求められる ようですが、大学が発展するにつれて、この規定を完全に守ること は難しいようです。

( 募金活動にマッカーサー、一万田、両氏が貢献した )

ICUの創立に必要な資金は、寄付によって集められました。1948年 にニューヨークに日本国際基督教大学財団が設立され、募金活動を 担いました。財団の名誉会長は、日本がアメリカとの戦争に負けた時、 連合国軍最高司令官として日本を占領したマッカーサーでした。 マッカーサーはアメリカで、ICUの創立のための資金集めに尽力しま した。一方、日本での資金集めには一万田(いちまんだ)日銀総裁が 尽力しました。

そして、2002年にICUは一万田氏の貢献に感謝して一万田記念 「平和の鐘」をキャンパスに設置します。一方、マッカーサー氏の 貢献に対しては何も設置していないようです。戦争を戦って来た 軍人だからでしょうか。

( ICUは世界人権宣言を大事にしている )

キリスト教と共に、あるいはそれ以上に、ICUは「世界人権宣言」 を大事にしています。世界人権宣言は、「第一条 すべての人間は、 生れながらにして自由であり、〜 」から始まり第十三条まである文書 です。1948年国連で採択されました。

起草委員会の委員長はエレノア・ルーズベルト氏(第二次世界大戦時 のアメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトの妻)です。ICUに入学 した学生は、全員がこの世界人権宣言の原則に立ち学生生活を送ること を記した誓約書に署名を行います。

こうして書いて来ますと、ICUは第二次世界大戦直後のアメリカの高揚 と熱気の影響を濃密に色濃く感じます。あの時から、時は止まって、 今も閉じられた空間に彼らの戦勝の高揚と熱気が満ちているのでしょうか。

( ICUの学費は高いけど、理由がある )

ICUの学費を見てみます。新入生の学費は、入学金300,000円、授業料 1,077,000円、施設費342,000円、合計1,719,000円。2年生以後は 入学金はありませんので1,419,000円。4年間の学費計、5,976,000円。

他の大学はどうでしょうか。政界を例にとりますと、安倍晋三首相の 母校成蹊大学は4年間の学費計4,340,000円。麻生太郎副総理兼財務相 の母校学習院大学は4年間の学費計4,361,200円。菅義偉官房長官の 母校法政大学は4年間の学費計4,450,000円(含納入諸会費等50,000円)。

なお、上記の学費の金額は2018年度の文科系のものです。こうして 他大学と比較しますとICUの学費はかなり高いです。この理由を ICU財務担当常務理事の方が昨年インタビューで説明している記事を 見つけましたので要点を紹介します。

1、教員1人当りの学生数が少ない。他大学では教員1人当りの学生数 が50人というところもあるが、ICUは20人程度。2、広大なキャンパス の維持に費用がかかります。芝生や木々の手入れに職人が必要、 コンクリートに覆われた大学に比べて余計にかかる費用です。 3、老朽化が進む各施設の保全や整備も結構大変な課題です。

和辻哲郎「風土」が語るように湿潤で雑草が繁茂する日本の気候の中で、 ICUの広大な緑のキャンパスを、乾燥して雑草がほとんど生えない気候の ヨーロッパの大学のように美しく保つには確かに費用がかかります。 それでも、学生が落ち着いて勉学に打ち込めるように、できればすべて の大学のキャンパスがICUのように広大な緑のキャンパスであることが 理想です。その上で学費がリーズナブルであればなお良いわけですが、 その両立は難しいのかもしれません。

( 私の母校は学費が安いのだった )

私が学んだ大学は明治初期に日本を西欧のような法治国家にすることを 目指して民間の法律家が作った学校です。西欧の自然法思想の影響が 根底に流れます。キャンパスはコンクリートに覆われて狭く、理想から は遠いのでした。それでも、そのようなキャンパスから政界で大臣に なり厳しさを増す現在の国際環境の中で国の命運を背負って懸命に働い ている人や、各界で活躍する多くの有能な人を生んでいます。

私自身はパッとしない凡庸な会社員人生を送りましたが、それは私の 能力の足りないところであってやむを得ません。理想のキャンパスでは ありませんでしたが、その代わり学費が安く、私のように貧しかった者 にも大学教育を受ける機会が与えられたことを、今は感謝しています。

(了)