西村経済再生担当相のコロナ対策発言撤回事件を考える(1)
2021年7月8日の会見で、西村康稔経済再生担当相が、新型コロ ナウイルス対策として酒類の提供停止に応じない飲食店に対し取引先 の金融機関から順守を働きかけてもらう、という発言をしたところ、 色々な所から強い批判を受けて謝罪し発言を撤回しました。
この発言は誰が考えてもおかしなものでした。自分の意のままになら ない飲食店に対して取引先の銀行などから資金的に締め上げさせよう というものですから根本的に発想がおかしいのです。
自由な取引を基本としている資本主義経済の根本が分かっていない証拠 です。たちまち謝罪、撤回に追い込まれたのは当然です。
西村経済再生担当相は、東大法学部卒、通産省(現経産省)入省という エリート官僚出身の政治家です。今回の発言は、いかにもエリート官僚 の思考でした。
資本主義経済の基本である自由な取引を国家権力の力で直接に動かそう としたのです。色々な所から強い批判を受けたのは当然でした。また、 閣内の他の大臣達からも同意を得られませんでした。
菅(すが)首相を始めとして現在の閣僚には私大出身の大臣も多くいま す。そのような私大出身の大臣には、西村経済再生担当相の独裁政治的 発言は根本的になじまない発言です。麻生副総理兼財務相は「何を言っ てるのか分からん。放っとけ。」と言ったそうですが、当然です。
西村経済再生担当相は総理大臣を目指しているということですが、この ような独裁政治指向の政治家を決して総理大臣にしてはいけません。 西村経済再生担当相のような人を政治のトップにすれば日本の大失敗、 無惨な自滅につながります。
( トップ人事の間違いは取返しがつかない )
政治をはじめ、どんな世界でもトップ人事を間違えれば、下の人たちが 真面目に働くほど、組織は無惨な自滅を迎えてしまうのです。私は 対米戦争(太平洋戦争)を学んで、そう思いました。対米戦争 (太平洋戦争)については、数え切れないほどの無数と言ってよい考察 があります。
最近では経営学者が対米戦争(太平洋戦争)を経営学的に分析した 「失敗の本質」という本が話題になったりしているようです。しかし、 対米戦争(太平洋戦争)の惨めな自滅の敗戦の原因は、 連合艦隊司令長官に山本五十六を選んだことです。
この場合、山本五十六がいけないのではなく、山本五十六を 連合艦隊司令長官に選んだ人が愚かで悪かったのです。山本五十六は 海軍兵学校卒のエリート軍人です。連合艦隊司令長官に選ばれれば エリート軍人として辞退はありえません。引き受けるしか道は無かった と思うのです。
しかし、山本五十六には戦う軍人として、本人の責任ではない気の毒な 致命的な弱点がありました。山本五十六は若い時、対露戦争(日露戦争) で重傷を負いました。その負傷は、軍医が命のために左腕を切り落とさ なければならないと言うほどの重傷でした。しかし、山本五十六は 「腕が無くては軍人は勤まらない」と軍医の話を断り、命の危険を乗り 越えて、左腕を切り落とさないで気迫で重傷の負傷を治したのです。
しかし、いかに気迫に満ちた軍人も人間です。山本五十六には、本人 にも自覚できない戦場への恐怖心が残ったと思うのです。人間の深層心理 として自然なことです。
本人は軍人としての気迫と勇気で払拭(ふっしょく)仕切ったと思って いたでしょうが、本人も自覚できない深層心理に残っていた戦場への 恐怖心が山本五十六の連合艦隊司令長官としての判断を誤らせたのです。
私が、こう思うのは対露戦争(日露戦争)時、東郷平八郎を 連合艦隊司令長官に選んだ人の話を読んだことがあるからです。明治天皇に 「なぜ東郷が連合艦隊司令長官か。」と聞かれたその人は「東郷は強運の 持ち主です。戦いで負傷したことがありません。」と答えたのです。
(次頁へ続く)