(2021/5/1)

会社員は心を鍛えて苦境を乗り越える(4)

(前頁より続く)

( 人事考課は「印象の人事考課」になる )

会社の仕事は難しいものです。法律を扱ったり、会計帳簿を調べて未収債権 の回収という辛い仕事に向かったりしなければなりません。仕事の内容に ついて専門外の人事部長は、当然のことですが、仕事の内容が分かりません。

直属の上司でも仕事の内容が分からずに、部下として仕事の説明に苦しむ ことも多いのでした。こうした状況の中で人事考課が出てくるのです。こう して、やむを得ず、人事考課は「印象の人事考課」になります。

このような印象の人事考課の一つ一つに心を乱していたら、会社の仕事は できないのです。それほどに会社の仕事は厳しいものでした。

定年の日、定年になった人は私を含めて二人でした。もう一人の人は、定年 退職の挨拶を拒否しました。流行の「成果主義」が続いていて会社内の 雰囲気は荒(すさ)んでいましたから、やむを得ない面もありました。

私も思うところはありましたが、20年以上も勤めてきた会社ですので、 皆さんの前に立って、「長年、勤められたことへの感謝」と「皆さんの健康 を祈っています」という皆さんへの別れの挨拶をしました。

そして、夕方になって会社を出る時が来ました。その頃、会社への出入りに はセキュリティのための設備にカードを通さなければなりません。会社の門 を出た後、カード回収のために一緒に来た人に、セキュリティの設備越しに カードを返却して私の会社員生活が終わったのでした。

会社員の中には、会社員生活にピッタリ適合し、会社内での競争も大好きで 楽しい会社員人生を送る人がいました。すべての会社員が楽しい会社員人生 を送ることが理想です。しかし、なかなかそうはいきません。

私は周りは見渡すかぎり田んぼと畑だけというところで生まれ育ち、仕事を 求めて上京したのでした。都会になかなかなじめず、要領も悪く、周りの人 たちも迷惑したでしょうが、私自身も苦しむことが多いのでした。そういう 私が最後まで仕事ができたのは中年期になる頃「エピクテトス 提要」に 出合えたからだとしみじみ思います。

都会育ちの人でも会社員生活になじめず苦労している人がいました。また、 上司に恵まれて、その上司の引きでどんどん出世し順調で楽しい会社員生活 を送っている人もいましたが、その頼みの上司が不慮の出来事によって 失脚してしまい、部下の立場も一気に暗転することもありました。

会社員生活がうまくいかない人の中には、最悪、自分で自分の人生を終わら せてしまう人もいるのでした。私は、夫を失って悲しんでいる奥さんや父 親を失って泣いている娘さんを見たことがありました。このような悲惨な ことは、決してあってはならないことです。

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