(2021/5/1)

会社員は心を鍛えて苦境を乗り越える(3)

(前頁より続く)

( 人事考課は「C」だった)

私は固定資産管理など慣れない仕事を一生懸命にやりました。そして、 1年が過ぎて人事考課の季節がやってきたのです。私に出された人事考課 は「C」でした。「C」というのは人事規則では一発で降格される評価でし た。

「去年も降格されているのに、また連続で降格されるのか」と、私はさす がに嫌気がさしました。しかし、なぜか降格はされませんでした。20年 以上も勤務し2年後に定年になる社員に対し人事規則通りの連続の降格 人事をするのは人事政策上の不都合を感じて、人件費低減に熱心な人事部も、 さすがに躊躇(ためら)ったのかもしれません。

そして、人事考課表が返ってきました。私が勤めていた会社では、年度末に、 まず自分のその1年の仕事の達成を一覧表に記載して上司に提出するのです。 それに対して評価がされて人事考課が出されるのでした。

( 直属上司のコメントを読む)

そこには「考果委員会にて決定 C 」と記載されていました。そして、 直属上司のコメントが書かれていました。読むと14年も前の出来事が 生々しく思い出されて辛いし、恥をさらすようですが、現役の会社員の方 に何か参考になるかもしれませんので、そのまま書き写します。

「スピード感、積極性に弱さを感じる。事象に対しても他人事としてとら える面が多く、自分事として自身で取り組み解決していく姿勢を是非、 来期は出してほしい。」

この直属上司のコメントによって人事考課が「C」になったのでした。 直属上司は、私より一回り年下の人でした。一人っ子として親に大切に 育てられたという話でした。

私には、この直属上司のコメントのようなことに思い当たることはありま せんでした。この人には10年前にも辛い思いをさせられました。この人は 生まれ育ちの全く違う私が、とにかく理屈抜きで人としていやだったのか もしれません。

困ったことですが、会社の人事考課は、このような事がストレートに反映 しがちです。

私は固定資産管理の業務を中心に仕事をしていました。その頃は、業績の 思わしくない取引先の資産を買い取ったり、資産の確認をしたり、と 忙しく仕事をしていました。その上、次年度に本社の移転を控えていたため 「持っていく資産」「除却せざるを得ない資産」の区分けの仕事もあって 多忙でした。本社の移転のような仕事は、早めの事前の準備がとても大切です。

( 人事考課「C」の理由を担当取締役に聞く )

しかし、人事考課「C」の最終の理由だけは聞いておきたいと思いました。 それで「担当役員印」の所に印を押している取締役の所に行って、「私は、 なぜ人事考課「C」なのでしょうか。」と聞きました。メガバンクから天下っ てきた取締役は「私が「C」にしたわけではない。私はあなたは「B´」 (Bダッシュ)だと思う。」と言いました。

「B´」は「C」よりは良いのですが、平均以下ということです。それを 聞いて、私は何も言わずに少し会釈して下がりました。人事考課「C」の 問題は、これで終わりました。私の心の中に、上記のエピクテトスの言葉 「それは私にかかわりのあるものではない。」という言葉が聞こえたから です。

それからしばらくして人事部長の面談がありました。私は呼ばれたから行 っただけですので、特に何も言いませんでした。人事部長は「あなたは 会社の人事考課というものに何も感じないんだね。」と言いました。

私は何か言いたいとも思いませんでしたので、何も言いませんでした。 人事部長との面談は人事部長のその一言で終わりました。

その後、私の部署は人件費削減のため人を減らされて、私は減員された人 が未収のまま放置していた未収債権の回収のために遠い遠隔地に出張した りして、ますます仕事に忙しい日々を過ごしました。仕事のできる人が 少なく、目の前に迫ってくる仕事が難しい仕事が多いので大変なのでした。

こうして定年を迎えました。人事部長との最後の面談で人事部長が言った 「あなたは会社の人事考課というものに何も感じないんだね。」という 言葉を後で考えたとき、私は繰返し読んできたエピクテトスの言葉を身に 着けることができたのだと思いました。

会社の人事考課のような、自分では直接にはどうすることもできないもの に心を左右されない人間という印象を人事部長に与えていたようだからで す。

人が自分で、そのような心に鍛えることこそが、私の「エピクテトス 提要」 の精神の理解でした。

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(次頁へ続く)