日本の経済学と経済学者の特殊性について(3止)
(前頁より続く)( 派遣社員制度の急拡大について )
Tの話に戻りましょう。かなり以前の、何代も前の政権の時ですが、Tは 政府の委員として政策作成に深く入り込み、派遣社員制度を大幅に広げました。 労働市場には身分保障の無い派遣社員が大幅に増えました。
そして、驚くべき事に、いつのまにか Tは大手派遣会社の会長になっていたの です。つまり、世の中に派遣社員を大量に作り出して、自分は大手派遣会社の 会長になって派遣社員を使い回して利益を上げていたのです。
O(オー)は昔の人ですから、さすがにここまではやりませんでした。O(オー) は、ソ連を理想の国だと言って、日本への反感を煽って、学生や若い人たちを 幼稚な政治運動に走らせて、多くの犠牲者を出しました。罪なことでした。 しかし、Tのように政治を動かして直接に利権を得るようなことまではしませ でした。
こうした Tの行動に対して、心ある評論家は、ひどすぎると批判しています。 多くの若い人たちを身分の不安定な派遣社員に追い込んで、利権を得るのは、 あまりにもひどいからです。しかし、Tは平気です。持ち前の「小柄で童顔の にこにこ顔」で政治に食い込んでいるからです。
政治家は彼の「小柄で童顔のにこにこ顔」の魅力に取り憑かれていて、離れる ことはできないのです。
Tの構造改革は、もちろん良い面もあると思いますが、派遣社員制度の急激な 拡大は社会を大きく不安定化し、日本の将来を厳しいものにしました。
そして、Tにとって大学はよほど居心地がいいようで、69歳の今も大学教授を やりながら、必要に応じてその住み心地の良いぬくぬくした洞穴から出て来て 政府の委員、企業の会長、いくつもの社外取締役などを兼務して大活躍を続けて いるのです。Tは、これからも、10年あるいは15年は怪しげな政治的活動、 利権的活動を続けるでしょう。
( 日本の経済学は、これからも二つの経済学が続く )
日本の大学には経済学部が沢山あり、従って経済学者が沢山います。しかし、 日本の経済学は上記の状況ですので、ノーベル経済学賞を生み出すことはありま せん。
O(オー)が活躍していた頃、マルクス経済学が全盛でした。その後、マルクスの 「共産党宣言」によってできたソ連が、「資本論」による科学の装いのメッキが はげて自滅したため、おおっぴらにマルクスを名乗ると学生集めに不利なようで、 社会経済学などと名を変えているようです。
しかし、昔ほどハッキリしなくても依然として日本の経済学は、日本だけの独特 の二つの派に棲み分けて共存しています。大学の経済学部に入学する学生は、 そのことを前もって知っていた方が良いです。
そして、幸運にも優れた先生に出会ったら、その先生の指導で勉強を進めれば 良いのですが、あまりたいしたことないなと思ったら単位を取るための勉強は しなければなりませんが、それ以上の勉強は、今はアメリカの経済学の優れた 教科書が日本語に翻訳されて出版されていますので、それを読んで勉強するのが 良いと思います。
昔は、「読書論」などを堂々たる名文で書いて、私も愛読した高名な経済学者 なのに、翻訳となると途端に何を言っているのか分からないムチャクチャな文章 になったりして驚いたことがありました。しかし、今は翻訳技術が進んで昔の ようなことは少なくなりました。
それでも、日本人にとって、英語は大変難しい言葉なので、翻訳本を読んで良く 意味の通らないところがあったら、誤訳を疑ったほうがいいというのは読書の 常識として知っておいたほうがいいです。
誤訳が感じられるところは、可能であれば原文に当たってみるのが一番です。 原文に当たることができないときは、誤訳と思われる所は遠慮なく飛ばして 読むのが賢明な読書です。
( 日本人にとって英語は難しい言葉である )
私は若かった頃、有名な会計学者の随筆を読んだことがありました。その先生は、 大学院で修士論文を書くとき、アメリカで出版されたばかりで、まだ日本語訳 の無い原書を論文を書く参考のために読んだ時のことを書いていました。
その先生は「英語の文を読んでも何を書いているのか全然分からなかった。 それでも、3回も4回も声に出して音読していると不思議になんとなく意味が 分かってくるのでした。」と書いていました。
その先生は有名大学の出身で、後年、国家試験の出題者になるなど、超一流の 会計学者になられる先生ですが、それほどの先生でも大学院生の時の英語力は この程度なのだ、と驚いたり、安心したり、したものです。
この先生が、随筆でこのように書いているということは、自分の周りの先生達 よりも自分の英語力のほうがずっと上だという自信があるのです。だからこそ、 自分の経験をありのままに書いたのです。
しかし、この先生は、ご自分の英語力の限界をしっかりと自覚されておられたの でしょう。決して翻訳には手を出されないのでした。
そう言えば、随分昔の話ですが広島県選出の Mという、いつもニコニコしている 愛想の良い総理大臣がいました。Mは T大出身が自慢で、 W大学出身の、後年、 総理大臣になる有力な政治家に「あなたが W大学に入った頃は入学試験もなくて 希望する人は誰でも入れたんでしょう」と言って、相手を怒らせたのでした。
そのため、そのW大学出身の政治家は、一生、Mを許さないと憎んだというのです。 子供じみた話だとも思うのですが、どうも真実なんだろうな、とも思わせる話です。 というのは、今は W大学は入るのが難しい超難関の大学として知られますが、 昔は学生確保に苦しんで、年に何回も入学試験をして、一生懸命に学生確保に 努力したという話があるからです。世の中は変わるものです。
ところで、M首相の T大出身自慢以外のもう一つの自慢は、自他共に認める 英語堪能ということでした。アメリカの国務長官などと政治交渉をするとき、 通訳に席を外させて直に英語で話をするのを好むのでした。
しかし、 M首相の政治交渉の相手になったアメリカの国務長官が回顧録を出した時、 「Mは、英語のような言葉を一生懸命に話すのだが、何を言っているのか、分から なかった」と書いたという話があります。
また、新聞記者が M首相の自宅を訪ねると M首相は書斎で英字新聞を取出して 読み始めてから、その新聞記者を書斎に招き入れるのでした。その新聞記者は、 「 M首相は、いつ行っても英字新聞を読んでいる。しかも高齢なのに 小さな字の英字新聞を眼鏡をかけずに読んでいる。不思議な人だ。」と言ったと いうのです。
実は、M首相は新聞記者が来ると、いつも英字新聞を読んでいるフリをしていたのかも しれません。このようにして、M首相は一生懸命に努力して、英語に堪能と周りに 思わせることに成功して、自分の政治の力の一つにしていたのかもしれません。
最近は政治家の方で若い時に留学経験ありということで、英語堪能を売りにしている 方が何人もおられます。しかし、「こんにちは、お元気ですか、(ニコニコ)」ぐらいの 英会話はよいとして、こみ入った政治交渉は専門の通訳を使ってやるようにして ほしいものです。
そうしませんと、昔の広島県選出の M首相の例もあるので国民は不安です。
これほどまでに日本人にとって英語は難しい言語なのだと知っていれば、真面目 な大学生が「中学から習って、一生懸命に勉強しているのに、自分は英語が できない」と、いたづらに落胆することはないわけです。
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(了)
