(2024/5/1)

会計実務の物語 (2) 期末決算

今日(4/20)は、春の気持ちのよい日です。 風もほとんどありま せん。なんという良い春の日でしょう。今日は土曜日です。現役の 会社員だった頃は、このような春の日も、 4月は期末決算のため土曜日 も出勤して働いていることもありました。とても忙しいのでした。

期末決算になると、毎月の月次決算業務に期末決算業務が加わります。 会計実務では伝票を使っていました。私が新入社員時代は、そこから 延々とソロバンとボールペンを使っての総勘定元帳 への記入(転記) と計算という苦悩の作業が続いて、やっと何とか貸借対照表と 損益計算書を作成するのでした。

期末決算業務の最後には、各勘定科目の内容を項目ごとに1行づつ カーボン紙で複写 してボールペンで書いていきます。1頁30行ぐら いの用紙でした。慎重に書いていくのですが、1字でも間違えたら書 き直しです。 この書類に関しては訂正は許されないのでした。 最後の30 行目で書き間違えたら最悪でした。最初から書き直しです。

書き直しを避けるため、秘(ひそ)かに、「砂消しの消しゴム」とい うものが ありました。普通の消しゴムとは違ってザラザラした消し ゴムです。 カーボンで複写された字をその消しゴムで擦(こす)って 消すのです。しかし、 その方法はほとんど失敗して紙に穴が開いてし まうのでした。徒労の努力でした。 そして、最初から書き直しです。

( 性能の良い乾式コピー機が開発された )

入社して何年かした頃、性能の良い乾式のコピー機が開発されて 会社 に導入されました。それまでは、コピー機といえば、 湿式のベタっと した複写機でした。

新しく導入された乾式の コピー機には専用の部屋が与えられ、定年 退職されたような方(かた)が 専任の管理担当者として配置されました。

これで、期末決算の時に、各勘定科目の内容を項目毎に、 1行づつ カーボン紙で複写してボールペンで書くという作業から 解放されると 思いました。鉛筆で原稿を書いてコピーすれば 良いからです。書き 間違いがあっても鉛筆ですから簡単に直せ ます。

しかし、すぐにはコピー方式は許されませんでした。理由は、 「コピーされた字は、ナイフで簡単に削り取れるからだ。」と言う 方がおられましたが、本当のところはよく分かりませんでした。 期末決算業務の最後の書類作成に乾式のコピー機が許されたのは、 それから2年ぐらい後でした。

そして、パソコンとプリンターが普及してからは、カーボン紙を 見 ることもほとんど無くなりました。今は、メールを出す時のCC (カーボンコピー)に名前が残っています。

私が1字も間違わないように緊張して書いた手書きの勘定科目明細は、 他の人が書いた分とまとめられて決算解説書として1冊に製本されて 永久保存されました。会社の地下の暗い湿った倉庫に今も眠っているの です。

その後、随分と時間が経ってからですが、優れたパソコン会計ソフト が仕事に使われるようになって、会計実務の世界が一変しました。 ソロバンと手書きによる計算、記入(転記)という苦悩の作業を パソコン会計ソフトが一瞬でやってくれるようになったのです。 まるで奇跡のようでした。

(了)