(2022/9/1)

会計実務の経験(37)ー財務諸表ー

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今日は財務諸表です。「検定簿記講義/3級商業簿記  2017年 2月15日 検定(平成29年度)版発行 中央経済社 」では200 頁です。

ここでは、決算業務を学びます。決算業務は、テキストと実務は、 随分と違っていて、私は面食らってしまったところです。

会社が中途採用で経理の人を採用する場合、経理の経験を重視する のは、テキストと実務が随分と違っているという点にあります。特に、 上場しているような大企業の場合は何人ものチームで分業して 経理業務を進めていますので、その中に入ってスムーズに仕事で動く のは、なかなかに難しいのです。

簿記会計の知識は当然として、コミュニケーション能力、組織の 一部としての役割を果たすという意識、忍耐力、などといった能力 が求められます。

日商簿記1級といった資格を持っていても、実務経験がありませんと 経理部の中で動けないのです。

もちろん、学校を卒業して入社したばかりで、会社がこの人を経理部 で育てようとしている場合は別です。この場合は、学校で習った知識 を基にして先輩、上司の指導を受けて実務を身につけていけば良い わけです。

(会計実務には棚卸表も精算表も無いのだった )

上記の「検定簿記講義/3級商業簿記」201頁に簿記会計の流れが 図示されています。この図を簡略に表現しますと次のような流れに なります。

取引→仕訳帳→元帳→試算表→(棚卸表)→決算整理→決算振替→ 帳簿締切→財務諸表 。

また、試算表から帳簿締切の過程で精算表が作成されます。私のよう に会計実務と日商簿記3級の勉強を同時に始めたような人間にとって、 この流れの中の棚卸表と精算表に戸惑います。会計実務の現場には 棚卸表と精算表は、どこにもないからです。

私は若い頃、会計学の大家である中村忠(一橋大学教授)と大藪俊哉 (横浜国大教授)の「対談・簿記の問題点を探る」を読んだことが ありました。

この対談によりますと、日本の簿記は、アメリカの影響が強いという ことなので棚卸表と精算表の英語を見てみます。棚卸表は、 inventory sheet です。英和辞典をみますと、inventoryは「一覧表」 と訳語が出ています。sheet は「1枚の紙」です。

上記の「検定簿記講義/3級商業簿記 」では、「決算整理手続き を行うためには、次のように、あらかじめ決算整理事項をもれなく列挙 した棚卸表を作成する必要があります。」(206頁)と説明されて います。

(棚卸表は決算整理一覧が正しい訳である )

この説明と英和辞典のinventory sheet の訳を見ますと、棚卸表は 「決算整理一覧」という名称が適訳であり、また実体を素直に適切に 表わしています。会計実務にはない表ですが、日商簿記3級では、 これからも出てきます。

棚卸表という名称は誤訳である上に、商品、製品の棚卸と混同して 紛らわしいという欠点もあり、最悪の名称ですので、決算整理一覧と いう正しい訳、実体通りの名称に変えて、かつ、「この表はあくまでも 日商簿記3級で決算整理の勉強のために使う表であり、会計実務では 使いません。」と注記すると日商簿記3級を勉強する人や会社で経理 を担当している人に対して親切です。

最初に、アメリカの簿記書を英語で読んで日本語に訳した先人の努力、 苦労には感謝しますが、誤訳をそのまま定着させて後生大事に抱え込み、 商業高校や、大学商学部などで初めて簿記を学ぶ若い人たちを混乱させ、 苦しめるのは、もう止(や)めなければなりません。

(精算表は会計作業表が正しい訳である )

そして、精算表も会計実務では出てきません。英語では、 accounting worksheet です。直訳しますと、「会計作業表」です。 なるほど、そういうことか。会計作業表なら、よく分かります。学校で、 決算の手続きを教えるときに実務において会計の作業はこのような ことをやるんですよ、という一覧にして教えるということです。

どうして、accounting worksheet を精算表と訳したのか、理解に苦 しみます。これからでも遅くはありません。精算表はやめて会計作業表 としなければなりません。そして、「この表はあくまでも日商簿記3級 で実務の決算作業を説明するために使う表であり、会計実務で、この ような表を作るわけではありません。」と注記すると日商簿記3級を 勉強する人や会社で経理を担当している人に対して親切です。

(用語が誤訳だと勉強が混乱する )

日商簿記では精算表は最も重視されています。その大切な精算表が  accounting worksheetの誤訳であるというのはよくありません。 正しく会計作業表と訳して、簿記会計を学ぶ人に余計な混乱をさせ ないようにしなければなりません。

経済学部の選択科目で簿記の入門を習って、会社で長く会計を中心 に仕事をしましたが、inventory sheet は棚卸表ではなく正しくは  決算整理一覧であり、accounting worksheetは精算表ではなく 正しくは会計作業表であるということが分かって、私は納得できて 安心したのでした。

(日商簿記は3級が最も難しい )

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一般に、日商簿記は3級、2級、1級、と順次、難しくなると思われ ています。合格率だけを考えればそうかもしれません。しかし、 簿記の本質からは、そうではありません。3級が一番難しいのです。 3級を習得できれば、後(あと)は色々な仕訳をしていくだけなの です。

その大切な3級が 棚卸表や精算表という明らかな誤訳によって難 しくなっているのは残念なことです。いつの日か日商簿記3級が、 棚卸表は決算整理一覧、精算表は会計作業表と正しい訳になること を期待するものです。

(了)

[追記]

上記のように日商簿記3級で使われる「棚卸表」、「精算表」という 用語は、英語の誤訳であり、また、実体を表わしていないことが分か りました。

しかし、長年、使われて簿記の世界で定着していることを考慮して、 このサイトでは、これからは、棚卸表(決算整理一覧)、 精算表(会計作業表)と表記していくことにしました。