会計入門、日商簿記3級を勉強する (2止)
日商簿記3級の勉強を進めていきますと、「費用・収益の繰延べ」と 「費用・収益の見越し」という項目が出てきます。この項目は初めて日商簿記3級の 勉強をする多くの方(かた)が分かりにくいと思います。私も最初はよく分かりません でした。それは、このようなことをする目的が分からないからでした。
簿記は商業の記録を帳簿に記帳することから始まりました。人は記録しておかな いと忘れてしまうからです。そして、簿記が使われるようになった初期の頃は、 貿易の船が港から出港して2年後ぐらいに港に帰ってきて、1つの貿易の商売が完了と いうことで帳簿を締切ったりしました。
しかし、経済が発達して、簿記が商業や工業で幅広く使われるようになりますと、 毎期(通常1年間)、帳簿を締切って決算をするようになります。そして、その 決算により計算された利益に基づいて株主などがその利益を分けるようになります。 こうなりますと、毎期、決算により計算される利益がいくらになるかは株主などから 強い関心を持たれます。
( 毎期の利益を正しく計算するための仕訳が出てくる )
そのため、毎期の利益を正しく計算することを要請されるようになります。 「売上げ」のようなものは発生した時に帳簿に記入すれば、それで よいわけですが、例えば、1期間が1年間(4月1日〜3月31日)の企業が何らかの 事情で、期中である9月30日に1年分の家賃120万円(前家賃、月10万円)を まとめて現金で支払った場合、次のように仕訳します。
(支払家賃)120万円 (現金)120万円支払家賃は費用の勘定です。ですから、このままにしておきますと(支払家賃) 120万円が全額、今期の費用になってしまいます。しかし、 この中には今期の 家賃60万円と次期の家賃60万円が一緒になっているわけなので、次期の家賃を 次期の費用にする手続きをしなければなりません。それが「費用の繰延べ」です。
仕訳でいうと次のようになります。決算の時に行います。
(前払家賃)60万円 (支払家賃)60万円前払家賃は資産の勘定です。次期の家賃は「(前払家賃)60万円」という資産に なって次期に繰越されます。この分かりにくい仕訳の目的は「毎期の(つまり、今期の、 そして次期以降の)利益を正しく計算するため」なのです。
ところで、「前払家賃は資産の勘定です。」と言われると、初めて簿記を学習する方に とって、違和感があると思います。現金や建物は、もちろん資産の勘定です。しかし、 簿記上の資産は、現金や建物のような一般的に言われる資産よりも広い概念(がいねん)であり、 前払家賃のように、毎期の利益を正しく計算するための勘定も資産として扱うのです。
この辺(あた)りのことは、前払家賃のところで立ち止まって考え続けるよりも、日商簿記3級を とにかく最後まで勉強してから、振り返るようにして考えてみると、その意味が分かってきます。 そして、「前払家賃は資産の勘定です。」ということの意味が分かれば、簿記の特有の 構造を理解できたことになります。そして、簿記の最も困難な部分を超えたことになるのです。
( 日商簿記3級の仕訳には二つの種類がある )
つまり、日商簿記3級の仕訳には次の二つの種類が混在しているわけです。
1.「売上げ」のように発生した時に帳簿に記入すればよい勘定科目に関する仕訳2. 「前払家賃」のように「毎期の利益を正しく計算するため」の勘定科目に関する 仕訳
そして、2.の仕訳は精算表の修正仕訳の欄に記入されて損益計算書、貸借対照表に 反映されます。
日商簿記3級の仕訳には二つの種類が混在していること、それから、2.の仕訳の 目的が「毎期の利益を正しく計算するため」なのだ、ということを自覚すると簿記の 習得が早くなります。
「費用の繰延べ」、「収益の繰延べ」、「費用の見越し」、「収益の見越し」の 四つの目的はすべて同じです。
そして、日商簿記2級、日商簿記1級、のようなより高度な簿記になるということは、 基本的には、2.のような「毎期の利益を正しく計算するため」の仕訳の数、種類が増えて いくことなのです。
なお、会計課に配属された会社員の方が、こうして日商簿記3級の勉強をした場合、 日商簿記3級の試験を受けるか、受けないかは、どちらでもよいわけです。会社員に とって大切なことは、学んだことを仕事に生かしていくことだからです。受ける場合の メリットは、ご自分の力を確認することができるということです。
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(了)
