(2022/4/1)

会計実務の経験(21)ー固定資産(6止)ー

(前頁より続きます)

そして、これらの機械や工具備品を除却する場合には厳格な手続きが 必要でした。厳しい管理職は、廃棄にかかった費用の領収書などの 確認を求める人もいるほどでした。固定資産台帳から除却されて 簿外資産となった固定資産が横流しされるのを警戒していたのだと 思います。

固定資産台帳から除却されて簿外になった資産は、横流しが容易に なります。私が最初に勤めた食品メーカーは商品1個の利益は、 とても小さく、その小さな利益を沢山集めて年間ではまあまあの 利益を上げて経営していました。そのため、経営管理はとても厳しく、 会計担当者には正しい会計処理は当然のこととして、その上で、 会社内に不正が発生しないようにすることが求められていました。 会計担当者には社内の資金の流れや資産の状況が色々と見えるから です。

私は、その食品メーカーに15年ほど勤めて転職しました。そして、 転職した会社の子会社で働いていた時、ある大手の総合商社から 転職してきた人がいました。その人は、創業者に気に入られて 転職してきたので、いきなり子会社の社長でした。

( 大手の総合商社出身の人について )

そして、タクシー代は使い放題、どこへ行ったのかなどの明細は添付 されません。接待費も接待相手の明細もなく領収書だけなど、社内の 常識などを話しても耳に入らないないようでした。創業者に気に入ら れているということを背景にした、その人の個人的な横暴なのかも しれませんし、あるいは、大手の総合商社の社内の常識なのかもしれま せんし、どちらなのか今も分かりません。

大手の総合商社ともなると、一つの商談の利益が莫大で、商品1個の 小さな利益を集めて利益を重ねる食品メーカー出身の私とは感覚が 合わなかったのでしょう。

そしてある日、その人から「○○事業所の▲▲資産を除却しろ」と いう指示が来ました。こういう場合、書類手続きが必要ですが、 創業者の権威を背景に怒るばかりで何を言っても聞く耳を持ちません ので、私は○○事業所に電話して、その人の指示を伝えました。

それから、1カ月ぐらいしてその人は「○○事業所の▲▲資産は どこにある」と聞いてきました。私は「さあ、言われたとおり除却する ように伝えましたので、もう廃棄されて無いと思います」と答えま した。

すると、その人は怒りを露わにして「俺は除却しろと言ったので あって廃棄しろとは言ってない。廃棄されたところへ行って拾って 来い。ばらばらにされていたら部品を探して拾い集めて来い」と 恐ろしい顔で言うのでした。

そう言われても、会社では除却となると、使用不能になった 固定資産は厳格な手続きによって固定資産台帳から外されると 共に、売却価値があれば売却手続きが進み、そうでなければ 廃棄の処理が同時並行で進むので、いかんともし難(がた)いの でした。

その人は○○事業所の▲▲資産を固定資産台帳からはずして簿外資産 にして、どうしようとしていたのかは分かりません。なにしろ、所定の 書類を出す気が、はなから全くありませんし、いつも怒っていて暴言を 吐くばかりなので、どうしようもありませんでした。

大手の総合商社出身の人と働いたのは、その時、初めてでした。大手の 総合商社というのは激しい業界なので、誰もが、あの人のようにいつも 怒っていて暴言を吐く社風なのか、それとも、あの人の個人的な性格 だったのか、今も分かりません。とにかく、今、思い出しても恐ろしい 体験でした。

結局、私はその人に職場を追放されて異動になりました。その後、 その人は、市場視察ということで取り巻きを連れて会社の金で 欧米一周したりして、やりたい放題しているという噂でした。

しかし、その内、創業者の方がご病気で亡くなってしまいました。 お若いときから会社のために奮闘されてきた方ですから、お疲れに なったのでしょう。

その後、創業者の後ろ盾を失った、その大手の総合商社から転職 してきた人は、また、どこか別の会社の創業者に取り入って流れて 行ったと噂で聞きました。

「検定簿記講義/2級商業簿記(平成30年度版) 中央経済社 」 73頁 の「耐用年数の経過や物理的、機能的原因で使用できなく なったなどの理由で有形固定資産を使用から除き、帳簿から除外 することを除却といいます。ー略ー 」という記述を読んだ時、 私は、会社によって、あるいは業界によって固定資産の除却・廃棄 の会計実務は随分と違うものであるかもしれないことを思い出した のでした。

(了)

[追記]

会計理論の書として「財務会計講義 桜井久勝 2011年 3月20日 第12版第1刷発行 中央経済社」があります。 会計理論の通説(広く認められている学説)が網羅的に記述されて いて、広く読まれています。この本では、費用収益対応の原則という 用語は使われていません。しかし、75〜76頁の「第2節発生主義 会計の基本原則 1対応原則」を読みますと、著者は費用収益対応の 原則を認めていることが読み取れます。

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