(2022/4/1)

会計実務の経験(19)ー固定資産(3)ー

(前頁より続きます)

そして、二つ目の作用は年度末が来て期末決算をすると、税務申告書 を作って税務署に申告し税金を納めるのです。このようにして 会計実務の現場では法人税法を守っているのに、定期的にあるいは 不定期に税務署はやってきて、ここが間違っているなどと言い、 修正申告をさせられのでした。

そして、会社と税務署との間には税理士という税法の専門家がいます。 税理士は税務申告書を作成してくれるのですが、耐用年数で複数の規定 が適用できそうなときは長い年数の耐用年数を助言してくるなど、 どちらかというと対税務署に対して安全策を取るのでした。

ところで、企業会計が取得原価という用語を使うのに対して、法人税法 では同じ意味で取得価額という用語を使います。そして、会計実務で は取得価額のほうを使います。

あるとき、公認会計士補の人が監査に来ました(今は分かりませんが、 昔は試験に受かったばかりの人は公認会計士補と言っていました)。 この公認会計士補の人は、固定資産台帳の取得価額という用語を見て 「これは間違っている、正しくは取得原価だ」と激しく怒るのでした。 あまりの怒りに、私は会計実務の説明をするのも馬鹿らしくなって 放置して自分の席に帰って仕事をしたのでした。

固定資産のことではありませんが、会計実務で「たな卸資産」という用語 を見ることがあります。もちろん一般社会では「棚卸資産」と表記されます。 「たな卸資産」という変な表記は法人税法で使われているのです。「法人税法 第二十九条 内国法人のたな卸資産につきー略ー、」という条文があるのです。

これは、対米戦争(太平洋戦争)に負けたショックで漢字制限されたのです。 法律は一字でも直すのは手続きが大変なので、今もそのままです。しかし、 法人税法は「たな卸資産」の使用を強制しているわけではありませんので、企業は 「棚卸資産」にすればいいのに、いまだに「たな卸資産」という変な表記を している企業が結構あります。ことほど左様に、会計実務は法人税法に強く 影響されています。

私が新入社員だった時の上司に、「これは税務調査で否認される」が口癖の人が いました。今から思いますと、その上司は法人税法ノイローゼだったと思います。 会計実務は、簿記会計に商法(現 会社法)、法人税法、上場企業の場合は更に 有価証券取引法(現 金融商品取引法)に多層的に規制されて成立しています。

その上司はこのような多層の会計実務の構造が把握できずに、法人税法だけが単独 に頭の中で巨大化し、そのため法人税法ノイローゼになったのです。会社で経理部 に配属された新入社員は法人税法ノイローゼの人にならないように多層の会計実務 の構造を把握しなければなりません。

私は上場企業の食品メーカーに就職して会計に配属されて以来、ずっと会計の仕事 をメインにして定年になりました。その間、多層の会計実務の構造を把握し自信を 持って仕事をしている上司や同僚に出会うことは、ほとんどありませんでした。

出会うのは、上記の法人税法ノイローゼの人であったり、「仕事はハッタリも大事 だよ」と言って、会計規則違反の会計処理を編み出して部下に押しつけて困らせたり する上司のような人でした。ほとんどの人が先輩の仕事の見よう見まねで 仕事をしているのでした。「簿記会計なんて勉強しても無駄だよ。法人税法を勉強 すればいいのだよ。」という課長までいました。この課長は法人税法は簿記会計を 前提にしていることを知らないのでした。会計実務の構造を把握できずに、 諦(あきら)めて会計の仕事から離れていく人も1人2人ではありませんでした。

会社で経理部に配属された新入社員の人は、自分で勉強して、簿記会計に商法 (現 会社法)、法人税法、上場企業の場合は更に有価証券取引法(現  金融商品取引法)に多層的に規制されている会計実務の構造を把握しなければ なりません。会社の仕事で疲れ、人間関係で悩まされながらの、暗中模索の辛く 孤独な勉強が続きますが、ある時、「あっ、こういうことだったのか」と分かる 時が来ます。

余談でした。元に戻りましょう。こうして、会計の現場は、法に定められた事 なので已むを得ないのですが、監査法人や税務署に、監査だ、調査だ、と何日も 仕事を止められ、書類を掻き回されて後片付けに苦しむのでした。

(公認会計士と税理士の専門について )

公認会計士や税理士が会計実務の専門家と言われることが、よくあります。 しかし、この言い方は間違いです。会計実務の専門は、企業の会計の現場 で毎日、仕訳などの仕事をしている人です。公認会計士は監査の専門家です。 税理士は税法の専門家です。

会計実務の観点からすると、会計実務の主役は企業の会計の現場で毎日、 仕訳などの仕事をしている人です。会計実務の実体、本質は企業の会計の 現場に入って働かなければ分かりません。会計実務の観点からすると、 公認会計士や税理士は、会計実務の主役ではありません。

公認会計士や税理士は自他共に会計実務の専門家と思っていますの で、専門外の会計システムや経営管理について助言してくることがありま す。しかし、会計システムや経営管理は公認会計士や税理士の専門外であり、 通常は経験もありませんので注意しなければなりません。

ところで、会計実務の現場では、企業会計という簿記会計の原理の 上に、複数の法律が重なり合って同時に規制してくるので、簿記会計 の原理を習っただけの新入社員の頃は、何が何だか分からないのでし た。

まず、商法(現 会社法)が債権者保護の観点から企業会計を規制し ます。次に法人税法が課税の公平の観点から規制してきます。そして、 上場企業の場合は有価証券取引法(現 金融商品取引法)が投資家保護の 観点から規制してくるのです。

こうした会計実務の現場を理解するためには、それぞれの法の目的を しっかりと認識することが大事なのでした。この点は、東大法学部で 会社法を講義する田中亘教授も学生に教えるのに苦労されておられま す。

田中亘教授は言います。「法律の学習者は、簿記について知らずに 会社法の計算に関する規定を学ぼうとする結果、いくら勉強しても よく理解できない、ということになりがちである。」会社法 田中亘  2016年9月27日 初版 東京大学出版会 374頁 

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田中亘教授も簿記と会社法の関係を学生に教えるのに苦労しています。 東大法学部卒の財務省エリート官僚は、政府の貸借対照表の借入金 (国債など)だけを取上げて、「国(実は政府)の借入金が大きいので、 消費税の増税が必要です」とよく言います。

私は、これは増税のための口実に使っているのかなと思っていましたが、 田中亘教授の本を読みますと、東大法学部卒の財務省エリート官僚は、 簿記が分かっていないのです。田中亘教授は上記の本に簿記を詳細に 記述し、東大法学部の学生に簿記を教えることに努力されておられます。

(田中亘教授は簿記、会社法を教えるのに苦労する )

これから一層努力されて、東大法学部卒の財務省エリート官僚が政府の 貸借対照表を読めるようにしていただきたいです。東大法学部の学生も 田中亘教授の熱意の指導に応えて、会社法の時間にしっかりと簿記を学び、 田中亘教授を嘆かせないようにしてしてください。

そうしませんと、東大法学部卒の財務省エリート官僚は、毎年、「国 の借入金が大きいので、消費税の増税が必要です」と言って、消費税 (税と言っていますが、消費税は税ではなく消費に対する紛れもない 罰金です)を上げていくため、これからの日本は経済成長どころか 慢性的な経済縮小の国になってしまいます。

歴史を学びますと、対米戦争(太平洋戦争)時の日本海軍は、 海軍兵学校卒の海軍エリート軍人達が、戦いの現場の基本を知らないために、 大切な大きな軍事力を持てあますかのように愚かしい戦いを繰返して日本を 破滅させます。

現在の日本は東大法学部卒の財務省エリート官僚達が、経済の現場を 知らないために、せっかく大きくなった日本経済を持てあますかのように消費に 対する罰金(消費税)を上げていって日本を破滅させています。その結果、 この20年、日本経済は全く成長できず、当然、会社員の給料は上がって いません。

海軍兵学校卒の海軍エリート軍人は軍事、東大法学部卒の財務省エリート 官僚は経済、つまり対象が軍事と経済というように違うだけで、いずれも 現場を知らないために日本を破滅させるという点で、その構造は全く 同じです。残念だ、としか言いようがありません。

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