会計実務の経験(18)ー固定資産(2)ー
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なお、間接法で仕訳すると、貸方は建物減価償却累計額(または単に減価 償却累計額)という勘定科目を使います。会計実務では、この間接法を 使います。
理由は、貸借対照表を見ると固定資産の減価償却がどれだけ進んでいるか が明確になるからです。固定資産の減価償却がどれだけ進んでいるかは、 企業の財務体質を見るときの指標の一つになります。直説法ですと、 建物の帳簿価額が減価償却分づつ減額していくため、減価償却がどれだけ 進んでいるか、貸借対照表を見ただけでは分からないのです。
さて、「検定簿記講義/2級商業簿記(平成30年度版) 中央経済社 」 68頁の減価償却の解説を見てみましょう。「有形固定資産は、長期に わたり使用する間に使用や時の経過など様々な理由によってその価値を 減少させていきます(ただし、土地は使用しても価値が減少せず、 建設仮勘定もまだ使用していないので価値は減少しないと捉えられていま す)。価値減少は使用期間中の収益獲得に貢献するものとして、期末に 有形固定資産の取得原価を価値減少に応じて耐用年数に渡り費用配分する 手続を行います。この手続を減価償却といいます。配分される原価は、 減価償却費として費用計上されます。」
この解説の中の「費用配分する手続」は費用配分の原則と言われます。 そして、「収益獲得に貢献」は費用収益対応の原則を表わしています。 そして、これらの原則は、公準第2 継続企業の公準から導き出される 期間損益計算という概念に結びつくのです。
(費用収益対応の原則は会計全体の基本である )
ここで、費用収益対応の原則とは、企業で発生する費用と収益との 合理的な対応を考えて会計処理をしようという考え方です。
しかし、会計学者の中には、この費用収益対応の原則を否定する学者が います。収益は収益、費用は費用で各々の原理で処理し、そのように 処理して集計した数字を縦に並べて機械的に差引計算された数値が利益 である、と主張するのです。
しかし、企業の会計実務の現場に身を置きますと、これまで経験した ことのないことが起きることがあります。例えば、新しい市場が現れた り、新規事業が立ち上がったりしたときです。こうした場合、 会計担当者は、費用と収益との合理的な対応、即ち費用収益対応の原則 を考えて会計処理を考えなければなりません。そうしなければ、適切な 会計処理ができないのです。
費用収益対応の原則は、会計実務においては時空を超えた普遍の真理で す。私は、会計実践において、どんな新しい事態に対しても費用収益対応の 原則を基本に考えて会計処理をすればよいのだ、と確信を持っていました。 そして、何の間違いもありませんでした。
企業の会計実務は、濁流が流れる泥水の川です。会計実務の担当者は、 この濁流の泥水の中に入って泳がなければなりません。濁流の泥水を 泳ぎ切るには、費用収益対応の原則という考え方をしっかり身につけて いなければなりません。
一部の会計学者のように、「収益は収益、費用は費用で各々の原理で 処理し」などの考え方は現場では通用しません。企業の会計実務は川の 清流などではないからです。このような会計学者は、仕訳の事例を山の ように集め続けて、自分の著書がどんどん厚くなっていくのを見て 喜んでいます。
会計実務の担当者は、このような会計学者の著書は、仕訳の事例集と して利用するようにし、決して会計理論の書として扱ってはいけません。
ところで、会計実務の濁流の泥水の右岸には、上場企業の場合、 監査法人(公認会計士の集団)がいて、会計を水泳に例えますと、 実務担当者の腕の掻き方とか足の蹴り方とかを見て、色々な意見を言い ます。監査法人は投資家保護の観点から見ています。監査法人 (公認会計士の集団)は、有価証券取引法(現 金融商品取引法)に規定 されています。最近は、監査法人は欧米のIFRS(イファーズ International Financial Reporting Standards 国際的な財務報告の諸基準 )の導入を 背景に、監査項目を増やして監査収入増に務めているという話もあります。
なお、IFRSはなぜか国際会計基準と訳されて、いかにも会計理論の ような印象を与えますが、IFRSは財務報告の諸基準であって、 会計理論ではありません。日本では、色々な分野で意識的か 無意識的か分かりませんが、原語である英語の直訳とは随分と 異なる訳が与えられるので注意が必要です。
( IFRSの本当の目的について )
IFRSは、物づくりで稼げなくなった欧米が、企業そのものを売買して 儲けようという目的から作り出したものという話もあります。 貸借対照表を見れば、その企業をいくらで売買すれば儲かるか、と いうことを企業の会計に自分でやらせようということだというのです。
世界史をみると、いかにも欧米の考えそうなことです。こうしたこと に対しては、欧米人、特に英米のアングロサクソンは天才的に長(た) けており、日本人の中には欧米と利害をともにする人たちもいたりして、 安易に、その気にさせられたりすることがあるので注意しなければなり ません。
会計は、欧米から入ってきた文科系の分野です。この欧米から入って きた文科系の分野は、西欧の歴史、思想などが背景にあるのですが、 種々の理由で日本ではそれらの背景から切離されている上、色々な 思惑、利害が働きますので、全体の動きを理解するのは、なかなかに 難しい分野なのです。
日本人は器用なものだとも言えますが、欧米から入ってきた文科系の 分野は日本では西欧の歴史、思想といった背景無しで器用に論じられる ことが多いため、いつも根無し草のようにフワフワと浮いているところが あって、学び始めの時は理解が難しいのです。そのため、欧米から入って きた文科系の分野は、声の大きい人が勝つという困った状況になりがち です。経済の分野もそうです。会計も例外ではありません。
さて、会計実務の濁流の泥水の反対側の左岸には、税務署がいます。 税務署は、税法の課税の公平という観点から会計実務に色々なことを 言います。固定資産ですと、耐用年数、償却率、残存価額、など、 実に詳細な規定を作っています。
企業会計には法人税法が適用されます。法人税法は、二つの方法で 会計実務に作用してきます。まず、期中の会計処理に直接に作用しま す。上記の耐用年数、償却率、残存価額、などを法律で直接に規定し ます。そのため、会計実務で固定資産の担当になると法人税法の 規定集と首っ引きになるのでした。
日商簿記においては、分かりやすくするため償却額の計算を先の 例題11−3のように、3,000,000円÷20年= 150,000円と計算していますが、実務においては取得価額に 償却率を掛けて計算します。そして、固定資産の減価償却は、政治 の力によって動かされやすい分野ですので、法律の改正に注意して いなければなりません。
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