会計実務の経験(17)ー固定資産(1)ー
今日は、固定資産です。「固定資産とは、企業が長期にわたって使用 または利用するために保有する資産」と定義されます。 「検定簿記講義/3級商業簿記(平成29年度版) 中央経済社 」 145頁。
この定義において注目されるのは、「長期にわたって」という部分です。 つまり、短期(1年)に対する長期(1年超)という相対的な概念で あるということです。
そして、固定資産の会計処理である減価償却には、会計の理論が象徴的 に現れます。期間損益計算、費用収益対応の原則、費用配分の原則、 といった会計理論です。
期間損益計算とは、会計公準の(2)継続企業の公準、から導き出され ます。継続企業の公準とは、企業は永遠に存在すると仮定する考え方で す。そのため、会計の計算は期間を人為的に区切って計算することに なります。
企業の解散を待って、会計の計算をするわけにはいかないからです。 日本の企業は、4月1日から3月31日を会計期間としていることが 多いです。
私が勤めた会社も3月31日が決算期末でした。会社で働いていると、 4月1日から3月31日までの会計期間を当然のように思います。 しかし、実は、会計期間は上記の会計公準(2)継続企業の公準に よって理論的に支えられているのです。
ところで、公準とは、人が理性で考えていって、これ以上考えられない という思考の地点のことです。この地点の考えを公準と名付けて、 理論構築の出発点とするのです。
(会計公準は会計理論の出発点である )
会計公準は三つあります。会計公準の(1)は企業実体の公準です。 企業は存在すると仮定するのです。会社に勤めていると、企業が存在 するのは当たり前です。
ところが、私は勉強をする中で、世の中には「企業は存在しない」と いう有力な考えがあるのを知ったのでした。商法(現 会社法)です。 商法(現 会社法)は、企業は存在せず、存在するのは株主であると いう立場から商法(現 会社法)の理論を構築していくのです。
しかし、企業が存在しないとなると、会計は困ってしまいます。企業 の経済計算である会計は、企業が存在しないとなると、計算できない ことになります。存在しないものの経済計算は不可能だからです。 そのため、会計は、企業は存在すると仮定するのです。
会計公準の(2)は、上記の継続企業の公準です。会計公準の(3) は、貨幣的測定の公準です。会計は、貨幣の単位、日本でしたら円で 計算するということです。この場合、円の価値は一定で変わらない ものと仮定します。
現実の経済は、インフレーションやデフレーションの影響で円の価値 は変わりますが、円の価値は一定で変わらないものと仮定するわけ です。
これらの三つの公準は、どれも大切な考えですが、その中でも、 簿記会計を学んだり会計実務の実践において、最も強く意識しなけ ればならないのは(2)継続企業の公準です。ほとんどの会計理論は、 この(2)継続企業の公準から導き出されるからです。
会計実務の場においては、「継続企業の公準によって」などの 会計理論の発言がなされることは、まずありません。しかし、新しい 販売経路の発生、あるいは新規事業の企画、といった企業で発生する 新しい事態に対して確信を持って適切な会計処理をするには、 会計公準を出発点とする会計理論の体系をしっかりと把握できている ことが必須なのです。
会計公準という考え方は、人間の理性の限界という認識から来ていま す。理性の限界を弁(わきま)えて、これ以上は考えられないという 思考の地点に会計公準を設定し、この会計公準を出発点として理論を 構築することによって、高度な資本主義経済下における企業経営を 支える土台となる会計理論の体系が築かれたのです。
会計公準は、会計理論の出発点ですが、抽象的で、日常生活の思考と は異なる思考です。そのため、すぐには理解できないのでした。 簿記会計の勉強を進め、会計実務の実践をする中で、何度か復習して 自然に会計公準の思考が身についてくるのでした。
会計公準は会計理論の原点です。会計実務の実践において、会計処理 に迷って答えが出ないときは、原点である会計公準に返って考える ことが大切です。
(固定資産の会計処理 )
では、具体的に固定資産の会計処理を見ましょう。「検定簿記講義/3 級商業簿記(平成29年度版) 中央経済社 」152頁 「例題11−3 次の取引について仕訳しなさい。@決算(年1回)にあたり、当期首 に取得した建物(取得原価¥3,000,000 耐用年数20年 残存価額0)について定額法により減価償却を行う(直接法による こと)」
この例題の解答は解答欄を見れば書いてありますが、この例題の会計 処理の流れを期首から見てみたいと思います。まず、期首にこの建物を 取得します。代金は小切手を振り出して支払ったものとします。仕訳は 次にようになります。
(借)建物 3,000,000 (貸)当座預金 3,000,000
決算にあたり、減価償却をします。
3,000,000円÷20年=150,000円を次のように仕訳し ます。
(借)減価償却費 150,000 (貸)建物 150,000
この仕訳を耐用年数の20年にわたって続けますと、この建物の残存価額 は0になります。
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(次頁に続きます)



