公認会計士という制度について

私は学校を卒業してある会社に就職しました。会計課に配属されて仕事を 始めました。ある時、公認会計士という方(かた)が3人ほど来社されて、 「監査をします。」ということでした。

公認会計士の方は社員から先生と呼ばれ、「この書類を持ってきなさい、 あの書類を持ってきなさい。」と言って、色々と書類の数字を確認するので した。

3日ほどして、監査が終わるのでした。監査に使われていた会議室には、 会計書類があちらこちらに乱れて置いてありました。その会計書類を慎重に 元あったキャビネットなどに戻すのが苦労でした。誤って別の場所に戻しま すと、後日、上司の方が「あの書類が無い、無い、、、」と言って探し回るの です。そして、部下総出での書類探しになるのでした。

不毛で、辛く、疲れることでした。こんなにも迷惑な公認会計士という方 が、どういう方なのか、私はその時は、まだ分かっていませんでした。

( 公認会計士制度はアメリカから導入された )

その後、私は勉強して公認会計士という方がどういう方なのか、分かりまし た。公認会計士という制度は、日本がアメリカとの戦争に負けてから、日本の 証券市場を民主化するため、ということで、アメリカから導入された制度でし た。

株式市場に上場している会社は、公認会計士の監査を受けることが法律で義務 づけられたのです。こうして、公認会計士という職業が誕生して日本の経済界に 定着したのでした。

日本で公認会計士になるには難しい国家試験に合格しなければなりません。 元のアメリカの公認会計士試験は資格試験です。受験者は試験で一定の水準に 達すれば、公認会計士の資格を得られます。しかし、日本では元のアメリカとは 違い、競争試験になったのでした。受験者の点数を高い順に並べて、上から何人が 合格という試験に変わったのでした。

四方を海に囲まれた日本には昔は海の道、今は空の道も加わって西から東から 多種多様な色々な文化、制度がやって来ます。しかし、そのままの形で定着する ものは無く、ひとひねりされて定着するのです。

公認会計士試験は資格試験から競争試験になって定着したのでした。そのため、 とても難しい試験になって、その試験を通って公認会計士になられた方はとても プライドが高いのでした。

会社では公認会計士の方を先生と呼んで敬意を示していました。私は本家のアメリカ でも「ティーチャー」と呼ぶのだろうか、と疑問に思いましたが、今も分かりません。

( 色々な公認会計士の方とかかわってきた )

会社は公認会計士の方にお金を払って監査をしていただきます。最初、わざわざ お金を払って監査を頼むなんて、不思議でした。しかし、上場を維持していくためには、 そのような制度になっているのでした。私は上場企業で長く会計の仕事をしましたので 色々な公認会計士の方とかかわりました。

監査の仕事の日は、ランチタイムになりますと、会社がランチを取り寄せて公認 会計士の方に提供いたします。公認会計士の方はメニューが気に入りませんと、残し たり、手をつけなかったりして「まずい」と意思表示するのです。

そして、「公認会計士に良いランチを提供しない会社は発展しないものだよ。」と おっしゃる公認会計士の方もおられました。

その頃は、試験に受かったばかりの方は公認会計士補という資格で、指導してくれ る公認会計士の方の補助者として見えられるのでした。試験に受かったということで 尊大な態度をとる公認会計士補の方がおられました。「こういう書類を持って来なさ い。」と強い命令口調で言うのです。

指導する公認会計士の方も持て余して、辟易(へきえき)しているようでした。 そういう公認会計士補の方には書類をなかなか持って行かないようにしました。督促の 電話がかかってきましたら「ただいま探しております。」というのです。そういうこと を二度、三度とやってから、「見つかりました。」と言って持っていくのでした。

尊大な態度をとる公認会計士補の方などへの対応に、まだ若かった私が苦労していた とき、先輩社員の方が上記のような対応の仕方をさりげなく教えてくれたのでした。 親切な先輩社員に感謝いたしました。

また、ある若い女性の公認会計士の方は地方のご出身の方でした。仕事をしながら、 鉛筆を器用に片手でくるくると回すのでした。ご実家に帰られた時、ご両親に公認会 計士の仕事の説明をすると、「東京でいつまでも探偵のような仕事をしていないで、 早く帰ってきて結婚しなさい、と言われる。」と苦笑しながら言うのでした。

また、会社がハワイに営業を拡大する、という話が社内で出ると、「私は英語がで きます。ハワイでの監査の仕事は私がします。」と一生懸命にアピールを始める公認 会計士の方がおられました。

こうして、定年退職まで私は色々な公認会計士の方とかかわったのでした。

( 監査役制度の実情、企業会計原則の制定・解釈・運用 )

それから、会社の監査制度としては商法(現 会社法)に監査役制度がありました。しか し、この監査役は会計に無知であったり、会計の経験があっても狭い知識しか無かった りして、会計監査の機能を果たせない方がほとんどでした。そのため、上場企業の会計の 信頼性は公認会計士監査によって支えられているのです。

ところで、公認会計士監査のための基準が必要ということで、1949年に企業会計原則が 作成されて、その後の日本の会計に大きな影響を与えました。当時の日本の会計学は ドイツ会計学が主流でした。その他に、イギリス会計学、アメリカ会計学、などが研究されて いました。それらの会計学を研究されていた学者の方たちが中心になって、企業会計原則が 作成されたのでした。

こうしてできあがった企業会計原則はドイツ会計学、イギリス会計学、アメリカ会計学、 などが混ざりあったものになりました。このようにして作成された企業会計原則の解釈は なかなかに難しいものになります。

企業会計原則の冒頭に置かれている一般原則は短い文章ですが、会計学者の方の解釈も 色々な説があります。会社で会計実務を担当する者としては、通説に敬意を払いつつも、 自分が納得できる説を見つけることが大事になるのでした。


(2016/9/1)

(了)