会計実務の経験(9)ー商品有高帳ー
今回は商品有高帳になります。商品有高帳の様式はテキストの見本 (96頁)の通りです。ここで大事なのは払出単価をどのように 計算するかです。先入先出法、移動平均法、が説明されています。 そして総平均法が2級で説明されます。
「先入先出法は、先に仕入れた商品から先に払い出されたと仮定 して払出単価を決定する方法です。」(96頁)と定義されます。 ここで気をつけなければならないのは、「仮定して」という部分 です。
実務の現場においては、色々な事情で後に仕入れた商品が販売の ため先に払出されたりすることもあります。そのような場合も 先入先出法で計算する場合は、先に仕入れた商品から先に払い出 されたと仮定して払出単価を計算するのです。
計算方法ですから会計の考え方に少し慣れますと何という事の ないことですが、会計初心者の場合は「商品は必ずしも先入先出に なっていないのに」と迷ったりすることもあるようです。
私が最初に就職した会社では移動平均法を使っていたので、先入 先出法のような「仮定して」ということはないのでした。
このようにして、日商簿記では払出単価の計算ということが重視 されます。商品有高帳の残高の金額は差引きの計算額なわけです。
一方、商品有高帳は法人税法では商品の期末評価額の問題として 現れます。同じ商品有高帳なのに、日商簿記の解説と法人税法の 規定は異なるのです。
私が転職した会社では、法人税法が規定する最終仕入原価法を使 っていました。最終仕入原価法は最も期末に近い時に仕入れた単価 で期末の商品を評価する方法です。シンプルな方法なので多くの 会社で使われているようです。
なお、私の経験では、税務調査で日商簿記(簿記会計)のように 払出単価を先に計算して残高を差引計算するか、法人税法の規定に 従って商品の期末評価額を先に計算するかを問題にされたことはあ りませんでした。普通の会社は、その差額が少額だからと思われます。
しかし、仕入価格が大きく動く業種の会社は、当然、強制力のある 法人税法の計算方法に従わなければならないと思われます。その 差額が大きくなるからです。
ところで、日商簿記を受験する場合は、当然ながら日商簿記のテキスト の計算方法に従わなければなりません。一方、会計実務では強制力の ある法人税法を意識し、基本的には従わなければなりません。この辺り のことが会計初心者の頃は、なかなか分かりづらいのでした。こうした 事に関する私の経験は、今後の番外編で話していきたいと思います。
( 法人税法の「たな卸資産」の表記に驚く)
余談ですが、法人税法の法規集では、棚卸資産を「たな卸資産」と 表記していました。初めてこの表記を見たとき、私は異様なものを 見た気がしました。何かの間違いかとも思いました。
どうも、これは対米戦争(太平洋戦争)で負けたショックで、漢字 制限が行われ、「棚」という漢字が使えなくなった影響のようです。 財務省というのは一度決めたら変えないようで、これからもずーと、 こうかもしれません。
しかし、「たな卸資産」を見ていると何とも醜悪としか言いようがなく、 こちらの美意識もおかしくなりそうです。むやみに難しい漢字を使うの も良くありませんが、「棚」を使ってはいけないなどということも 良くありません。漢字の使い方も自然なバランスが大事です。
元に戻りましょう。日商簿記(簿記会計)は一つの自立した、そして 完結した世界を構築しています。これに対し、法人税法は「課税の公平」 という観点から簿記会計に対して規制をかけます。
つまり、法人税法は自立した存在ではなく、簿記会計の存在を前提に して存在しているわけです。そして、この規制のかけ方に二つあります。 一つは、商品有高帳の計算の仕方のような簿記会計の途中過程を規制し てくるのです。もう一つは、会社の利益に対して加算減算をして会社の 所得を計算させるのです。
会計初心者であった頃の私は、この簿記会計と法人税法の関係が、 なかなか掴(つか)めなくて苦しんだのでした。
( 商法(現会社法)も規制してくるのだった)
法人税法が出ましたので、商法(現会社法)について話しておきます。 商法(現会社法)は、「債権者保護」の観点から簿記会計を規制します。 会社には色々な債権者がいます。典型的なのは会社にお金を貸している 銀行です。
こうした銀行にとって、会社が架空の利益を計上してその架空の利益に 基づいて役員賞与や株主配当をされると銀行の債権(貸付金)に不利益 になります。そのため商法(現会社法)は簿記会計に規制をかけている わけです。
こうして、会社というのは、利益の観点から見ると、利益(儲けたお金) の分け合い、取合いの場なのです。経営者は役員賞与が欲しい、株主は 配当が欲しい、銀行は貸付利息が欲しい、政府は税金が欲しい。そして、 これらのお金の計算の基礎になるのが、会社が計算した利益の額なのです。
これだけの利益の分け合いの関係者がいるのですから、その仕組みは複雑 にならざるをえません。会計実務担当者は勉強が大変ですがやむを得ませ ん。上場企業の場合は、更に有価証券取引法(現金融商品取引法)による 規制が加わります。有価証券取引法は「投資家保護」の観点から簿記会計 を規制するのでした。
こうして簿記会計に対するを規制は複雑ですが、言葉を変えれば洗練され ているとも言えます。
( 規制の無い荒々しい金(かね)の取合い)
私は、1960年代後半の大学生時代に、規制のない荒々しい金(かね) の取合いを目撃したことがありました。私が通学していた大学は一部の 学生達がグループに分れて対立し、暴力による騒動が日常的に起きていま した。
そのような暴力騒動は、当時は、主立ったどの大学でも起きていました。 この騒動は、政治に係わる運動のように見えていました。しかし、これは 政治運動とは関係無く、自治会費の奪い合いだったのです。
私は、そのことを大学を卒業してから随分時間が経ってから、偶然に当時 の経済学部長の回顧録をインターネットで見て教えられたのです。経済学 部長によると、当時は学生から学費を徴収するときに、一緒に自治会費を 代理徴収していたというのです。そして、その自治会費を自治会に渡して いたのでした。
その自治会費は毎年約5千万円だったというのです。その金(かね)は 自治会を押さえた学生グループに渡るわけです。そして、経済学部長は 就任して1年目に、自治会役員選挙が適正に行われたのか確認できないと して、一旦自治会費の引渡しを凍結したのです。
その結果、経済学部長は学生に殴られて傷を縫わなければならないような 大怪我をし、また「夜道に気をつけるんだな」などと脅されたというので す。
その後、学生グループの暴力騒動で隣の施設に遺棄された学生の遺体を 引き取りに行ったり、学生との交渉に疲れ果てて病気になり、任期途中で 経済学部長を辞められたのでした。本当に気の毒な事です。
( 規制の無い金(かね)の取合いは無惨であった)
規制の無い金(かね)の取合いは、このような無惨な結果を生むのです。 そして当時は、このような無惨な事は私が通学する大学だけではなく、 学生数の多い、つまり自治会費の金額の大きい、ほとんどの大学で起きて いました。
ちなみに、この大学自治会は対米戦争(太平洋戦争)に負けてから、大学 の民主化という名目でアメリカから取入れた(強制された?)制度です。 アメリカの大学自治会はどのようなものか知りませんが、日本の大学自治 会はこのような無惨な制度になったのです。
対米戦争(太平洋戦争)に負けたドサクサにアメリカから取入れた(強制 された?)制度はすべて見直さなければなりません。
その後、自治会費の代理徴収は無くなって、学生グループによる政治運動 を装った金(かね)の取合いの暴力騒動は、どの大学からも無くなったの でした。自治会費の代理徴収が無くなったのですから、自治会費を取り合 っての学生グループ同士の暴力騒動も無くなったのです。良い時代になっ たのです。
会社の場合、利益の分け合いに関する幾つもの関係者がいるのですから、 その仕組みは複雑にならざるをえません。会計実務担当者は勉強が大変で すが、合理的で洗練された利益(お金)の分け合いのためにはやむを得な いことなのです。
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