(2021/3/1)

会計実務の経験(8)ー商品(2止)ー

(前頁より続きます)

( 3、売上原価法)

「売上原価」勘定を使う方法です。日商簿記では特に名前が無いよう ですので、私が売上原価法と名付けました。日商簿記2級のテキストに 出て来ます。「検定簿記講義/2級商業簿記「平成30年度版]2018年 4月1日発行 中央経済社」のテキスト 46〜49頁。

2級に出てくるからといって特に高度な仕訳ではありません。何という ことのない仕訳です。

テキストでは、「売上原価勘定を設けて売上原価を計算する場合」とか 「販売のつど売上原価勘定に振り替える方法による記帳」と長く記述 されています。

前者は、仕入勘定を経由して売上原価勘定を使う方法です。後者は、 仕入勘定を経由しないで売上原価勘定を使う方法です。

しかし、会計実務の観点からはどちらも不適切です。効率を重視する 会計実務が、前者の「仕入勘定を経由して売上原価勘定を、、、」と いう非効率な方法をすることは考えられません。

この非効率な方法は、会計実務の経験の無い大学教師が、三分法との 繋(つな)がりを重視するあまり、三分法の流れから考え出したことで しょう。

また、後者の場合の「販売のつど、、、」というのも一般的には考えら れないことです。私が学校を終えて就職した会社は、月単位で売上原価法 を使っていました。

売上原価法の仕訳(私が勤務した会社で経験した方法)

 仕入れた時(月単位で)
 (借)商品   100  (貸)買掛金    100

  売り上げた時(月単位で)
 (借)売掛金  150  (貸)売上     150 			     
 (借)売上原価  100 (貸)商品     100

まあ、普通は売上原価法を使うときは月単位です。三分法も一般的には 月単位です。会計実務では月単位で計算するのが普通です。

( 会計実務では月単位で計算する)

この月単位という観点からすると、テキストには気になる記述があります。 48頁です。この頁に次のような記述があるのです。「実務では、 会計期間を1年とし正式な決算は年1回であっても、月ごとに損益の概況 を把握し(月次決算)、早めに経営判断する企業が多くなっています。 (〜中略〜)そこで、実務上の観点から好まれるのが、販売のつど 売上原価勘定に振り替える方法です。」

この記述には認識の誤りがあります。現在は、ほとんどの企業が月次決算 (げつじけっさん)を実施しています。小規模な個人商店でしたら、 月次決算をせずに、今いくらお金があるかぐらいのやり方でもやって いけると思いますが、小さくても企業と言えるほどの会社ならば、 月次決算なしでやっていくのは無理です。

大学教師は研究室で本を読んで考えているだけではなく、企業の現場に 行って観察調査する方法を研究に取り入れる必要性がここにあります。

以前にも書きましたが、有名な経済学の祖アダム・スミスは工場に行って 作業を観察して、国富論の冒頭に分業論を書きました。

日本の会計学者も、アダム・スミスを見習って企業に行って観察調査しな ければなりません。

研究室で本を読んで考えているばかりという「資本論」マルクス流の楽な 研究方法ばかりやっていては、大学教授という立派な肩書きは得られても、 学問の進歩がありません。

そして、マルクスが資本論の冒頭に書いた商品論のように、突拍子もない ピントはずれの記述をしてしまいます。

更に上記の記述でとても気になるのは、仕訳の問題と経営管理の問題を 混同していることです。売上原価法は仕訳の話、つまり簿記の話であって、 経営管理(上記の経営判断)とは関係がありません。

仕訳の問題と経営管理の問題の区別がつかない原因は、財務管理の体系が つかめていないからです。

以前にも書きましたが、私は日本マンパワーの通信教育(中小企業診断士) で財務管理の体系を学ぶことができました。日商簿記のテキストを記述する にあたっても財務管理の体系という広い視野が必要です。そうしませんと、 仕訳の問題と経営管理の問題の混同という基本的な部分での認識の誤りを してしまいます。

( 簿記テキストの著者にも現場研究が必要です)

今、使っているテキストは簿記の学習に広く使われていますので、著者の 方達には努力してほしいものです。参考に、アダム・スミスのように企業 の現場に行って調査する方法を研究に取入れている大学教員の著作を一つ 上げておきます。

「経営学のフィールド・リサーチ 小池和男/洞口治夫編著 2006年1月20日  日本経済新聞社」

この本には、色々な大学の7人の教員が自分の研究分野の企業に行って苦闘 しながら調査研究する姿とその結果がまとめられて報告されています。 きっと、簿記テキストの著者の方達にも参考になります。

一方(いっぽう)、会計実務を担当している方は、日商簿記のテキストで 勉強する場合、著者が会計実務を経験したことの無い方達であるため、 どうしても現実と乖離している部分があることを前もって知っている必要が あります。

そうしませんと、混乱して無用なエネルギーを使ってしまうからです。会社で 会計実務を担当していると、会計以外にも総務、労務といった他の仕事も 同時並行でやらなければならないことも多々あります。時間がたっぷりある 大学生のように、ああかな、こうかな、と混乱している余裕はどこにもあり ません。

そして、同時に、たとえ現実と乖離している部分があっても、今のところ、 複式簿記の構造を学ぶのには日商簿記のテキストがベストに近いことも知って いたほうがよいです。

何といっても、現在、このサイトで使っている中央経済社のテキストは長い 歴史の中で磨かれて来たテキストです。大学教師や公認会計士などの方が 個人で書いたテキストとは完成度の次元を異(い)にします。

そして、簿記会計には永遠に変わらない普遍の真理の部分と、時代の流れの 中で変わっていく部分と、両方があります。

現在、このサイトで使っている日商簿記テキストは、毎年見直されて、時代 の流れの中で変わっていく部分がアップツウデイト(最新)であるという意味 で安心であり、他に替えがたい簿記会計テキストなのです。

【検定簿記講義】3級商業簿記〈2020年度版〉

新品価格
¥880から
(2021/2/27 21:49時点)

検定簿記講義 2級商業簿記〔2020年度版〕 (【検定簿記講義】)

新品価格
¥935から
(2021/1/17 17:43時点)



(了)