会計実務の経験(3)ー決算ー
前回の会計実務の経験(1)(2)では、「検定簿記講義/3級商業簿記 2017年2月15日 検定(平成29年度)版発行 中央経済社 」 (以下、テキストと言います。)の第1章「簿記の意義としくみ」第2章 「仕訳と転記」第3章「仕訳帳と元帳」を読みました。
今回は第4章「決算」」42頁に進みます。私と同じように3級商業簿記 の勉強と会計実務の仕事がほとんど同時に並行して始まった人は、この決算 のところで頭の中が?マークで一杯になると思います。
私が会社に入って会計実務の仕事を始めたときはボールペンとソロバンで 会計帳簿を作成するのでした。パソコンはまだありませんでした。
テキスト44頁に決算手続(期中の手続、決算の 手続)の流れ図があります。私は会社で、「取引→伝票→総勘定元帳→ 残高試算表→貸借対照表、損益計算書」という流れで、毎月、月次決算 (げつじけっさん)をし、6ヶ月しましたら中間決算(ちゅうかんけっさん)、 年度末になりますと期末決算(きまつけっさん)をやっていました。
( 会計実務には「精算表」が無いのだった)
テキストの仕訳帳の代わりに伝票を使っていましたが、何といっても 不思議なことは、テキストにおいて重要な働きをしている「精算表」が 会計実務においては、どこにも無いことでした。
私は、大学を卒業して 会社員になって以来、2つの会社で会計を中心に長年にわたって仕事をして 定年を迎えたのですが、一度たりとも精算表というものを見たことがありま せん。
会社では、年度末の3月の月次決算を終えたら、直ちに期末決算の 仕訳に入っていくのでした。ひたすら仕訳をしていって、残高試算表を作る のが仕事でした。期末決算の終了まで、精算表はどこにもありませんでした。
私は、会計学の大家である中村忠 一橋大学商学部教授と大藪俊哉 横浜国大経営学部教授の対談集を読んだことがあります(対談 簿記の 問題点をさぐる 昭和62年1月20日初版発行 税務経理協会)。
この 対談集で、大藪先生は「精算表は、帳簿決算手続を説明するのに有効な働き をするし、また複式簿記の構造等を理解させる上にきわめて有効な表である と私は考えております。」と言いました。この大藪先生の発言を受けて、中村先生は 「アメリカの教科書では、「決算は精算表で行う」とはっきり述べています ね。」と発言しておられます。24頁
このお二人の両大家のご発言から すると、精算表というのはアメリカから来て、学校教育の世界で簿記を教え るのに役立つということで重宝されてきたということが分かります。精算表 というのは学校にしかないものなのです。
そして、教室で簿記を教える先生も、 会計実務を経験することなく、学校の簿記会計の先生になった方(かた) なのです。そのような先生が、生徒、学生に簿記を教えるのに便利なのが 精算表なわけです。
これに対し、会社で会計実務をやりながら同時に簿記の 勉強を始める人は、会社の会計実務に苦しみながら簿記の技術を身につけて いかなければなりません。
そして、会社で毎日の会計実務に苦しむだけでは、 簿記の理論構造を理解することは難しく、簿記の理論構造を理解するには、 今のところ、やはり日商簿記3級のテキストがベターであり、これを超える ものはありません。
( 日商簿記3級と会計実務の違いを知る)
但し、日商簿記3級のテキストは、上記のように、 会計実務を全く経験したことのない先生が、学校の生徒、学生に簿記を教える ためのものなのだということを、あらかじめ知っておくと随分と楽になります。
日商簿記3級のテキストには学校の生徒、学生に簿記を教えるための工夫が 盛り込まれているからです。その工夫の代表が精算表です。こうしたことを 予(あらかじ)め知っていれば、会計実務と日商簿記3級の乖離によって頭の 中が?マークで一杯になってしまい混乱したりして、エネルギーの無駄遣いを するようなことがないわけです。
(注)精算表は、英語の用語の誤訳なのでした。そのことは、「会計実務の 経験(37)ー財務諸表ー」に書きましたので参照してください。
そして、日商簿記3級が終わると次に、 日商簿記2級、日商簿記1級、と続いていて、順次難しくなっていくと一般 には考えられていますが、そうではありません。
( 日商簿記は3級が一番難しい)
私は、何十年にもわたって 会計を中心に会社に勤めてきましたが、実は日商簿記3級のテキストを使って 簿記の理論構造を理解するのが、複式簿記の一番難しいところなのです。
ここさえ乗り越えれば、後は複式簿記の構造に色々な中味を入れていくだけ です。普通の会社は、簿記の理論構造に日商簿記2級の中味を入れて、そして 株式を公開している上場企業は更に日商簿記1級の中味を入れていくだけです。
複式簿記は、500年も前にイタリアという遠い国で現れたものですから、 その思考方法は、私たちの一般的な思考と比較すると特殊な思考です。 そのため、日商簿記3級を早く習得するコツは、あまり考え込まずに心を素直 にして、500年前のイタリアの商人のところで発生した複式簿記による 帳簿記入法をテキストとワークブックで追体験することです。
そして、 日商簿記3級のテキストは実務を何も知らない学校の生徒、学生に教える ために精算表のような工夫があって、実務と大きく乖離している部分があると いうことを、会計実務を始めた人は、あらかじめ知っておくことが大事です。
( 工業簿記について)
なお、製造業の会社では日商簿記2級の工業簿記が必要です。但し、 工業簿記に含まれる原価計算のやり方は会社によって製造している製品が 異なるため、独自性が強く、私は15年にわたり製造業の会社に勤めましたが 日商簿記2級の工業簿記は、あくまでも基本を理解するための参考なのでした。
基本部分はどの会社も日商簿記2級の工業簿記の通りですが、原価計算表などは、 会社毎に独自の工夫が大きいのでした。作っている製品が、会社によって異なる のですから、自然にそうなります。
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(了)

