東大の会計学テキストを読む @
財務会計論の勉強のし直しをしてきますと、現在は「討議資料 財務会計の 概念フレームワーク 2006年12月 企業会計基準委員会」が 財務会計論に大きな影響を及ぼしていることが分かってきました。
国家試験用テキストとしてロングセラーの「財務会計講義 第12版 桜井久勝 中央経済社」も「財務会計の概念的な枠組みを規定するこの新し い演繹的アプローチは、会計基準の改善に役立つものとして、広く用いられ ている。」59頁 と書いています。
私は、財務会計の概念フレームワーク を読んでみましたが、どうもよく 分りませんでした。インターネットで調べますと、上記の財務会計の 概念フレームワーク は、当時、企業会計基準委員会委員長を務めておられ た S東大教授が、基本概念ワーキング・グループの座長となって、まとめ あげた文書であることが分りました。
( 奇妙な数式で始まる企業会計 )
それで、私は財務会計の概念フレームワーク を座長としてまとめあげた S教授の本を読んでみることにしました。「企業会計 利益の測定と開示 1988年5月25日初版 1993年11月26日第6刷 東京大学出版会」 (以下、「企業会計」)です。
私は長年、企業で会計実務を中心に仕事をしてきましたので、会計の本は ある程度の数を読んできました。しかし、S教授の上記の本は私が読んできた 会計の本とは全くその趣(おもむき)を異にする本なのでした。
冒頭の「はじめに」が終わりますと、S教授は次のように書き始めます。 「いま、できるだけ単純な所得と資本の概念を得るために、ただひとつの 資本財(資本設備)を保有し、その資本財からn年間にわたって毎年度末 (時点1,2,・・・,nで表わす)にC1,C2,・・・Cn,の正味現金収入を得る 企業を想定する。」4頁 。
そして、いくつかの前提を置いて、第1年度はじめ(時点0)における上記 資本財(資本設備)の価値を計算する数式を書くのです。残念なことに私が 今使っているワードパッドでは、その数式をそのままここに書き写すことが できませんので、とりあえず形だけを表現してみます。
A=B+C+・・・+N
上記の数式の意味ですが、Aは第1年度はじめ(時点0)における上記資本財 (資本設備)の価値です。Bを算式で表現すると、C1÷{(1+r)の1乗}に なります。rは資金を外部に投資すれば得られるはずの利益率です。 CはC2÷{(1+r)の2乗}、そしてNはCn÷{(1+r)のn乗}になります。
なお、1乗、2乗、・・・、n乗は累乗(るいじょう)と言い、通常、1乗は 省略されて表現されないわけです。そして、累乗とは「同じ数または同じ 文字をいくつか掛けあわせた積」のことです。今回、この数式を説明する ために私が50年以上前に習った高校1年の教科書「標準数学T 清水書院 昭和37年11月15日発行」を久しぶりに本棚から取り出して累乗のところを 復習しました。
このような調子で、上記の「企業会計」は最後まで進んで行くのでした。 それにしましても、私はある私大で簿記、財務会計論を習い、就職した企業 で主として会計実務に従事して定年になったのですが、私の経験からします と上記の S教授の数式は実に奇妙な数式です。
企業の会計実務においては資本財(資本設備)は購入時に固定資産として 購入価額で会計帳簿に記入し、減価償却を通して耐用年数の期間に原価配分 していくわけです。
( 会計実務とは計算の流れが逆になっている )
ところが、S教授は資金を外部に投資すれば得られるはずの利益率 rなどを 考え、それらから資本財(資本設備)の価値を計算するというわけです。 企業の会計実務でやっている計算とは、逆の流れの計算をやっているわけです。
「色々な条件を設定してみて頭の中で抽象的に計算してみるのだよ」と言って しまえばそれまでですが、それならば、実務と繋がっている企業会計という 枠に縛られないで、経済学者がやっているように資本主義経済における 企業行動のモデルを作って、そのモデルの完成度を上げていくというような ことをおやりになるのがいいように思われるのです。
(次頁に続きます)
(了)