(2018/11/1)

財務会計論を学ぶ(13)-重要性の原則 B止-

(前頁から続きます)

余談になりますが、旧制商科大学の流れを組む国立 H大学の故 N教授は 会計学者には珍しく筆の立つ方(かた)で、会計の事も含んだ味わいのある 随筆を書かれるのでした。私は若い頃 N教授の随筆を愛読したものです。

その随筆の中に N教授がまだ若くてある大学の講師だった頃に、中央官庁 の依頼により、ある産業分野の会計の実情を調べて改善点を含めた報告書を 作成し、中央官庁に提出する仕事をしたときの経験を書いていたことがあり ました。

その仕事は中央官庁から何人かの会計学者の大家(たいか)に依頼されて、 その大家の方達からまだ若くて講師だった N教授に下(お)りてきたのでした。 N教授は1人で一生懸命に調べて1人で報告書を作成し、会計学者の大家を 通してその中央官庁に提出したのでした。そして、その中央官庁は N教授の 報告書に基づいて関係業界に会計方法の指示を出したのです。

( N教授はビックリするほどのお金をもらったのだった )

それから、N教授は今回の仕事の慰労会があるということで、中央官庁から 仕事を受けた会計学者の大家の方達に呼ばれて、その慰労会の末席に座って いました。

慰労会が始まって、しばらくすると、N教授は大家の1人の方に廊下の片隅に 呼ばれました。そして、その大家の方は封筒を取り出して N教授に渡し、 「今回の仕事の報酬です。少ないが君はまだ若いんだから、これで我慢して ください。」と言ったのです。

そして、慰労会の帰りに N教授がソッと封筒を開いてみると、ビックリする ような大きなお金が入っていたのでした。そして、これで少ないということは、 ほとんど名前を貸しただけの大家の方達は一体どれだけの報酬のお金をいただ いたのだろうかと、N教授は帰り道にあれこれと想像したのでした。

最近の会計規定の作られ方は分かりませんが、N教授の随筆を読んで、 「ふーむ、政府の委員会の仕組みはこういうふうになっているのか」と、 若かった私は思ったのでした。

そして、世の中の普段は見えない所を N教授にソッと教えてもらった気持ちに なったのでした。

( 特別損益項目に重要性の原則が適用される例 )

話は重要性の原則に戻りますが、会計実務においてよく経験するのが 特別損益項目に関する処理です。「企業会計原則注解[注12]特別損益項目に ついて」に規定されています。

この規定には、特別損益項目として、(1)臨時損益(固定資産売却損益など) (2)前期損益修正(過年度における引当金の過不足修正額など)が上げられて います。そして、「なお、特別損益に属する項目であっても、金額の僅少なもの 又は毎期経常的に発生するものは、経常損益計算に含めることができる。」 とされています。

この規定は、特別損益項目に関する処理に重要性の原則が適用される場合の例を 書いているわけです。この場合、金額が僅少かどうかの判断は上記の経過勘定項目の ときの判断基準と同じです。

なお、私の経験では、会計実務の現場で「これは重要性の原則により、、、」と いう発言を聞くことは、まず無いのでした。それは重要性の判断が上記のように 「売上高などと比較して」という相対的なものであって、「○○○円以下」など という絶対的な基準ではないからです。

それに、そもそも上司や先輩に財務会計論を習得している人がほとんどいないと いうことがありました。従って、重要性の判断については財務会計論を勉強 しながら会計実務の経験を積む中で、自分で自力で、判断力を身につけていく しかないのでした。

(了)