(2018/11/1)

財務会計論を学ぶ(13)-重要性の原則 A-

(前頁より続きます)

学校時代に優れた先生に出会って、親切に財務会計論の指導を受けてから 会計実務に入ることができた方(かた)は幸せです。しかし、私の体験では、 そのような幸せな方には、ほとんど出会いませんでした。

ほとんどの方は、たとえ、学校時代に財務会計論を習っていても、実は 先生も財務会計論がよく分からないまま教えていることが多いため、学生は 当然ながら財務会計論全体の体系がよく分からないまま、会社に入って、 会計実務を始めるのでした。

私が財務会計論を教わった Y大の U先生は入試の最も難しい T大出身でし たが、「収益」と「利益」の違いが分からないため、著書の中で、「収益」と 「利益」の用語を逆に記述しているのでした。そして、毎年、その本を使って 学生に、「収益」と「利益」の用語を逆に講義しているのでした。

私も初めて習っている事ですので気づかないのでした。今から振返って考え ますと、喜劇でもあり、悲劇でもあり、情けなくもあり、惨(みじ)めなこと でした。

後年、国家試験の委員になるなど財務会計論の権威になった先生ですが、T大出身らしく、簿記の 計算の勉強を軽視して、やらなかったのでしょう。恐らく U先生は一生、 「収益」と「利益」の用語を逆に講義し続けたことでしょう。何ていい加減 なんだろうと思いますが、世の中はそんなものなのです。

( 経理部長も会計の難しさを嘆くのだった )

期末決算の時に、「会計は難しいんだよな」と、決算書の作り方が実はよく は分からないことを、普段は強気なのに、期末決算で疲れたのでしょうか、 つい内心の本音をポロッと漏らしてしまう経理部長がいたほどです。経理部長 になってもそうなのです。

ですから、上司や先輩が会計の仕事を教えてくれない時、イジワルをしている と短絡的に思ってはいけません。実は、その上司や先輩も財務会計論の体系が 分からないまま、見よう見まねで給料のために毎日の会計実務の仕事を、内心 の不安を押し殺して何とかその日その日をやっていることが多いのです。

そのような上司や先輩も職場で威厳を保つために、普段は内心の弱気や不安を 見せずに、自分は何でも知っているという強気の姿勢を崩さないものです。 毎月の給料をもらうためには、そうせざるを得ない面もあります。

会計実務に従事したばかりの初心者の方は、そのような上司や先輩の態度に 惑わされてはいけません。特に性格が真面目な方ですと、そのような上司や 先輩の態度に惑わされて自信を失ってしまう危険があります。

しかし、上記のような会計実務の職場の現実を前もって知っていれば、大丈夫 です。会計実務の経験を積みながら、日商簿記3級、財務会計論、法人税法、 と勉強を進めていけば、会計実務の全体が、いづれ分かる時が来るのです。

その時までは、靄(もや)がかかったように周(まわ)りがよく見えない、 辛いこともある道のりですが、これはどの仕事でも大なり小なり同じでしょう からやむを得ません。

( 分厚い会計法規集に圧倒されないように気をつける )

分厚い会計法規集などに圧倒されることもありません。私が集中して 財務会計論を勉強したときに使った会計法規集(中央経済社編、昭和60年発行) は、タテ18cm,ヨコ13cm,頁数660頁です。

それが年々、大きく、かつ厚くなり、同じ中央経済社編の会計法規集なのに 2011年発行では、なんと、タテ21cm、ヨコ16cm、頁数にいたっては 1,363頁です。見た目、ザット5倍ぐらいになっています。

日本経済が成長し国際経済と関係が深まるにつれて、欧米から「新しい」と 称する会計の考え方が押し寄せて来ているため、中央官庁の官僚の要請に 応じて、学者の方(かた)や監査法人の公認会計士の方(かた)たちが 集まっては、会計に関する規定を作り続けていますので、会計法規集は、 年々、巨大化しています。

これからも、会計に関する規定は積み重なっていって、更に巨大化し続ける ことでしょう。

しかし実は、巨大で分厚い会計法規集の中で日常の会計実務に使うのは、 それほど多くはない基本部分です。この基本部分をしっかり見つけ出して理解し、 日常業務に使えることが大切です。

そして、特殊な周辺部分は、ご自分が担当することになった部分を必要な時に 参照すれば良いのです。会計実務を担当する方(かた)は、年々、これからも 無限に増えていく特殊な周辺部分に圧倒されないように注意しなければいけま せん。

(次頁に続きます)

(了)