財務会計論を学ぶ(4)-会計公準-
前回は、簿記上の「取引」について話したのでした。今回は「会計公準」 について書きたいと思います。「財務会計講義 第12版 桜井久勝」 では、54頁になります。
ここでは、「第3節 演繹的アプローチの展開」という哲学用語のような 恐ろしく難しい「演繹的(えんえきてき)」という言葉で始まっています。
「演繹的アプローチ」とは、要するに人間の理性でもって色々と考えて 行って、これ以上は考えられないというところまで考え詰めて、そこの ところ(公準)を出発点にして理論を構築していこうという考え方です。
この考え方を会計に適用して会計理論構築の出発点としたものが、つまり 「会計公準」なのです。
余談になりますが、世の中には「自分はどこまでも考えることができる、 つまり「自分の理性は限界がなく万能だ」と考える、信じられないほど 物事が何も見えない人がいて、公準というものを考えない突拍子 (とっぴょうし)もない、途中で論理が途切れているのも構わない架空 の巨大な理論を作り上げて、わけの分からないことが大好きな人々を 熱中させ惑(まど)わし、世の中に自分の汚いヘドを吐きかけ回るような ことをして、世の中に大迷惑をかける人がいます。
このような理論は、途中で論理が途切れていて最初から破綻しているが 故(ゆえ)に、逆に、そこが変質的な魅力になって人々の心を強く捉え、 病的に大流行したりすることがありますが、時代が変化すると音も無く どこかに流れ去ります。
しかし、このような人の弟子筋の人達は、大学で世間の事を何も知らない 無知な学生を相手に、習い覚えた教祖の説を偉そうに講義していたり、 割り切って単位を簡単にドシドシくれる教師として学生におかしな人気を 博(はく)していたり、自分たちだけの小さいコミュニティを作って 自分たち同士でしか通じない言葉を何かありがたい大層な価値のある 秘密の言葉であるかのようにヒソヒソ喋ったり、中味は同じなのに表紙の 題名だけを変えることによって生き残りを図ったりして、暗くイジけて コソコソとしぶとく生き残っていたりするのです。
話は戻りますが、財務会計論は理性の限界をしっかりとわきまえて、 これ以上考えられないギリギリの所まで突き詰められた会計公準から出発 して、会計理論の世界を一歩一歩堅実に構築していくのです。
従って、財務会計論の中心の原理は時代の変化にも影響されずに、時空( じくう)を超えた普遍的で堅固な理論となっています。
( 会計公準は具体的には三つある )
さて、会計公準は具体的には三つあります。1.企業実体の公準 2.継続企業の公準 3.貨幣的測定の公準 の三つです。では、各々の 公準の意味を見ていきましょう。
1.企業実体の公準
企業実体の公準とは、圧縮して表現すると「企業会計は、出資者とは区別 された企業実体を対象とする」というものです。財務会計講義56頁
出資者の個人的な財産と企業の資産、負債を意識して明確に区分しませんと、 一緒になって混同し、わけが分からなくなってしまいます。そのため、 出資者の個人的な財産から明確に区別された企業それ自体の存在を認識し、 企業会計の対象とするというものです。
2.継続企業の公準
継続企業の公準とは、「企業は永遠に存続するものとする」というものです。 この継続企業の公準から色々な会計の原則が導出されます。
第一に「会計期間」という概念が導き出されます。企業会計は一定の期間を 区切って会計の計算を行うということです。日本では、会計期間を1年間、 4月1日から3月31日としている企業が多いです。私が勤務した二つの会社も 3月31日が期末決算日でした。そして、3月31日付けで決算をして利益を算出し、 その利益を元に株主に配当し、経営者には役員賞与を払い、税務署に税金を 納めます。
企業が終わりを迎えた時に利益を計算しますよ、と言っていたら、出資して くれる株主も現れません。何時(いつ)になったら配当がもらえるのか、 分からないからです。そのため、一定の期間を区切って会計の計算を行う わけです。
そして、ここから各会計期間の利益を正しく計算することを要請されること になります。日商簿記3級に出てくる、初学者の方(かた)には分かり難 (にく)い項目である「費用・収益の繰延べ」と 「費用・収益の見越し」 という項目も、実はこの要請から出てくるわけです。
企業会計の評価基準の基本である取得原価基準も、この継続企業の 公準から導出されます。このように、企業会計の諸基準はほとんどすべてが この継続企業の公準から導出されると言ってよいのです。
現実の世界では、企業が倒産して無くなることもあります。しかし、 財務会計論は「企業は永遠に存続するものとする」という前提を出発点に 置いて会計理論を構築していきます。ここに、財務会計論に固有の抽象化 された優れた思考があります。この思考を理解し、認識することが 財務会計論の習得を速くします。
3.貨幣的測定の公準
貨幣的測定の公準とは「企業会計の計算は、財貨や用役の共通尺度である 貨幣額を用いて行う」というものです。確かに、異なる種類の財貨や用役 の共通尺度は貨幣額以外に考えることはできません。
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(了)
