財務会計論を学ぶ(2)-簿記上の「取引」-
さて、前回紹介しました「財務会計講義 桜井久勝 第12版」(以下、 「財務会計講義 」と略称します。)を読むとき、どのように読んでいけば 良いのでしょうか。
1頁目から全部順番に読んでいくのも一つの方法かもしれません。しかし、 その読み方では、初めて財務会計論を学ぶ方(かた)は疲れ果ててしまう上 に、自分は何のどこを読んでいるのだろうと迷子(まいご)になってしまう 危険があります。
読み方を考えなければいけません。財務会計論は理論と制度から成り立って います。まずは会計理論を押さえて、次に会計を規制している制度を押さえ ることによって、最初に、財務会計論の骨格を把握するのが効率的な学び方 です。
なお、現役で会社で働いている方は、テキストの最新版を使って 勉強するのが良いです。会計制度の細かい部分が毎年、変更されている可能性 があるからです。そして、翌年以後は会計制度の変更部分を確認するだけで よいわけです。インターネットが普及したので会計制度の変更部分の確認は 容易になりました。
( 財務会計論の勉強は簿記上の「取引」の定義から始まる )
「スッキリわかる日商簿記3級 滝澤ななみ 第7版」では、冒頭の部分に「取引」と いう用語が出てきます。2頁
そして、取引のことを「日々お店が行った行動」と説明しています。これは 「取引」の正確な定義ではありませんが、日商簿記3級の出発点ではやむを 得ないことです。簿記上の「取引」は、日商簿記3級の勉強を一通り終わった 後でなければ、正確な定義ができない用語だからです。
財務会計論の勉強は、日商簿記3級 の冒頭で出てくる簿記上の「取引」の 正確な定義から始まります。
財務会計講義 25頁に簿記上の「取引」の定義が書かれています。 「複式簿記ではまず、企業の経済活動や事象の内、企業の資産・負債・資本に 影響を及ぼす出来事を取引(transaction)として識別する。」
この定義をもっと圧縮して、かつ実務的に表現すると、「資産・負債・資本を 増減させる出来事」となります。
例えば、不幸にして会社が所有している工場が何らかの原因で全壊して無く なってしまった場合、一般社会では取引とは言いませんが、簿記上は「取引」 です。なぜなら、資産が減少したので上記の定義に合致するからです。
簿記上の「取引」が発生した場合、仕訳をしなければなりません。会計の実務 は、常に、ここから出発します。会計実務の現場に身を置きましたら、会社に 簿記上の取引が発生していないか、いつも注意していなければなりません。
( 会計実務は取引を認識し仕訳するところから始まる )
簿記上の取引、即ち、会社の「資産・負債・資本を増減させる出来事」が起き たら、速やかに仕訳をしなければなりません。私の実務体験では「伝票を起こ さなければならない」と表現していました。伝票を使って仕訳をしていたから です。会社によっては、別の表現をするかもしれません。
私が会計実務を始めた1970年代は、手書きで伝票を書いてソロバンで計算 していました。コンピューターが普及してくると、手書き伝票の勘定科目に コードをつけて端末機でコンピューターに入力して計算しました。
そして、パソコンが普及すると、請求書などの証憑(しょうひょう)から直接 にパソコンの画面に入力してリアルタイムで計算し、同時に伝票をプリントす るようになったのです。Windows 95 が出現した時です。この時、会計実務にとって 革命といっていい変化が起きたのです。
バッチ処理からリアルタイム処理への変化です。次のバッチ処理を待つことなく、 会計データ入力と同時に総勘定元帳の数字が最新の状態になるのです。会計の 現場の処理担当者にとって作業効率という点で画期的な変化でした。
なお、財務会計講義 の著者は取引という用語に英語でtransactionとカッコ 書きでつけていますが、外資系の会社に勤務するのでもない限り、英語でどう言 うかは特に関係ありません。
日本の会計実務の担当者にとっては英語よりも日本語での定義をしっかり理解 することが何千倍も大切です。
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(了)
