(2017/11/1)

財務会計論を学ぶ(1)

以前に、会計の素養の無い方(かた)が会社で会計課に配属になった場合、 会計入門の日商簿記3級から勉強を始めるという記事を書きました。

では、会計課に配属になった方(かた)が、日商簿記3級の勉強を終えた 後(あと)、次の勉強のステップは何になるのでしょうか。

それは、財務会計論ということになります。会社が製造業の場合は 日商簿記2級の工業簿記も勉強しなければなりませんが、それは後(あと) にします。

私は、1970年代に学校を終えて会社に就職し会計課に配属されました。 私は学校で簿記と企業会計原則を習いましたが、それは入門の入門といった 程度の内容でした。会計課に配属になって、ほとんど一(いち)からの 本格的な勉強が始まりました。

会計の仕事を続け、30代で転職してからも会計の仕事を続けていました。 そして、50歳になった頃、異動になった子会社では、その会社の 事務関係の仕事全般になりました。

会計の仕事もありましたが小規模の会社でしたので、会計業務はさほどの こともありませんでした。

しかし、上場企業である親会社の連結対象の会社でしたので、決算になり ますと親会社から会計に関する色々な指示がありました。それらの指示を 通して会計が変わってきていることは感じていました。

60歳で定年になってからは生活のために、会計とは特に関係の無い仕事を して働いて来ましたが、60代半ばで何とか年金で生活できるようになりま した。

( 沢山の新しい会計基準が作られていた )

時間ができたので、私は本を読んで財務会計論を学び直そうと思いました。 上記しましたように、会計が変わってきていることを感じていたからです。 テキストは現在、標準的と思われる次の本にしました。

  財務会計講義 第12版 桜井久勝 1994年12月10日
   第1版第1刷発行 2011年3月20日 第12版第1刷発行 
   中央経済社

私はこの本を読んで驚きました。この20年ぐらいの間に、なんと沢山の 新しい会計基準が作られたのだろうと思いました。なぜ、こんなに沢山の 新しい会計基準が必要なのでしょうか。

上記の本は、テキストであり、新しい会計基準が生まれる背景までは説明が 無いのでした。私は、その背景を説明してくれる本を探しました。そして、 次の本を見つけたのです。

  変貌する現代会計 石川純治 2008年7月20日
    第1版第1刷発行   日本評論社
 
  この本を読んで 新しい会計基準が生まれた背景が分かりました。 230頁 弱の小型の本ですが、強い説得力を持つ本です。

私が若かった時、勉強した会計は原価主義でした。そして、この20年ぐら いの間に、原価主義の会計の世界に時価主義が入り込んで来て、現在は 原価主義と時価主義が会計の世界で併存しているというのです。

実は私は当初、時間ができたので会計の復習をする積りでいました。しかし、 この本を読んだ結果、「会計を復習しよう」などと考えていたことは甘いのだ、 と思い知らされました。

財務会計論の世界は、グローバル化する世界の中で、その姿を大きく変えて いたのです。私は、もはや会計実務の世界に身を置くことはありませんので、 仕事のためというのではなく、純粋に現代の会計を知るために改めて財務会計論 を学び直すことにしました。

( 財務会計論の本を選ぶことは難しい )

財務会計論を学ぶための本を選ぶということは実はとても難しいことです。大き な本屋さんに行くと財務会計論の本が沢山あります。書名が財務諸表論、会計学 入門、などとなっている本もありますが、扱っている内容はほとんど同じです。 初学者の方(かた)はどれを選んだら良いのか迷うと思います。

私は学校で財務会計論の基礎を習いました。その時、使ったテキストに次の ような叙述があります。「すなわち、費用収益対応の原則は、期間損益計算に おいて、一定期間に実現した<利益>に対して、これを獲得するために要した一切 の費用を計上することによって、正確な期間<収益>を計算するための会計処理の 原則である。」67頁( < > は私です)。

この叙述は明らかに<利益>と<収益>を取り違えています。今回、読み直して 気づきました。ご丁寧にも、先生の講義を聞きながら「ここは大切なところ」と 印を付けています。

この本の著者は Y大学の U先生でした。そして、本の奥付を見ますと、 昭和44年1月10日 初版発行 昭和45年3月30日 4版発行 となって います。4版でこのような取違えが直っていない、それも、「費用収益対応の原則」 という財務会計論の最重要な部分といってよいところで、このような誤りをする ということは、ちょっと信じられません。

U先生は、その本を出版した時、40代前半で 既に Y大学の教授でした。 そして、非常勤講師として私の学校で、ご自分のこの本を使って財務会計論の講義 をしたのです。U先生のこの本は企業会計原則に焦点を絞って精(くわ)しく解説 した本でした。

私は、このような基本部分に誤りのある本で企業会計原則を習ったのです。会社員 は学生と違って、忙しいですから最初から基本部分に誤りのないテキストに出会い たいものです。

会計学の先生には、簿記が分からない方がおられるという話を読んだことがあり ます。もしかしたら、 U先生はそうだったのかもしれません。

U先生は会計学の世界では珍しく、日本で入学が最も難しい T大学のご出身であり、 この本を出版された後、公認会計士試験委員など、重要な要職を歴任されました。 そして、会計学の大家のお一人になられたのです。

このような「超」のつく偉い先生の本にも、このような信じられないような誤りが あります。財務会計論のテキストは慎重に選ばなければなりません。

( 簿記の存在を無視した経済の議論は空論になる )

T大学では簿記は軽視されているということをどこかで読んだことがあります。 T大学経済学部では「簿記は勉強する気になれない。」と学生が言うのだそうです。

U先生は簿記の構造を知らないため、上記の叙述を正しいと思って書いていたのかも しれません。そのために、4版になっても利益と収益が取り違えたままであり、その 部分の講義でも、正しいと思って、そのまま講義したのでしょう。

講義を聞いていた私も、学生として初めて勉強していることなので、この基本部分の 誤りに気づくことができないのでした。まことに情けなく困ったことでした。

簿記は500年前以上の過去の時代にイタリアの商人の所で発生しました。その頃、 カトリック教会の1人の修道士が富裕なイタリアの商人の子弟の家庭教師として、その 商人の家に出入りしていました。

その修道士は数学を研究していて、商人のところで見た簿記に着目し、ご自分の著書に 書いたのでした。こうして、その本を通して簿記は世界に広まっていったのです。

この修道士、パチョーリ(Pacioli)は、カトリック教会フランシスコ派の修道士でした。 当時のヨーロッパでは現在のような学校は無く、パチョーリのような修道士が富裕な商人 の子弟の家庭教師をして、教育の仕事を担(にな)っていたのでした。

一方、貴族の子弟の教育を担う家庭教師はカトリック教会イエズス会の修道士でした。 日本史の教科書に出てくる有名なフランシスコ・ザビエルはこのイエズス会の会士なの でした。

話は戻りますが、現在ではある程度規模の大きい企業は経営管理の基礎として簿記は必須 の技術です。簿記の存在を無視した経済の議論は空論になります。

次回から早速、上記の本を参考に、現役時代の私の体験も振り返りながら、 財務会計論を学び直していきたいと思います。

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(了)