(2017/7/1)

英語、英文法、仮定法 (2止)

(前頁より続く)

前回は学校の英文法教科書の「仮定」というものが分からなかったという 話をしました。そして、学校を終えて25年以上も経って40代になり 会社員として働いていた私はある書店で次の本に出会いました。

<スタンダード英語講座 第3巻> 英語の歴史 著者 渡部昇一 
    発行者 大修館書店   1983年6月20日 初版発行

私は以前に著者の随筆の本を読んだことがあり、いい本だなと思ったので した。上記の本は著者の専門分野の本ということなので私には縁のない 分野だろうと思いました。しかし、随筆の本がとても良かったので、つい 何となく買ったのです。

そして、思いもかけず、この本は私の高校時代の謎であった英語の 「仮定」(仮定法)というものの真実を私に教えてくれたのでした。

( 仮定法は高校教科書の解説のようなものではなかった )

仮定法というのは「頭の中で思っていることを表現している」というので す。私の高校時代の教科書の解説のような「現在の事実に反する仮定を述 べたものである」というようなものでは、全くなかったのです。

仮定法はその思い(=想い)を述(叙)べる法なのだから本来の名称は 叙想法なのだ、というのです。そして、次の例文が出されます。

 I wish she were a bird.(彼女が鳥だったらよいのに) 120頁

「she were a bird」は話者( I )が自分の思い(=想い)を表現している ときの形なのです。

sheの次にwasではなくwereが出てきます。そして、この wereは 驚くべき ことに areの過去形である were と形は同じだけど、元の語は別の語だと いうのです。

それから、続けて「 'should 'を用いた仮装叙想法 」の説明が書いてあり ました。例文として次の英文があげられています。

It is natural that he should be angry.( 彼が怒るのは当然だ。)

「この 'should 'に当たるものは古英語においては叙想法 としての別の 変化をしていたのであるが、その語尾変化が曖昧になったので、 'should ' など、助動詞を使って示すようになった 」と解説されています。121,122頁。

つまり、この 'should 'は話者が「頭の中で思っていることを表現している」 ことを表しており、本来の叙想法 に対して仮装叙想法 なのだというのです。 まことに説得力のある説明です。

なお、この解説の中の古英語(こえいご)というのは昔の英語のことです。 私たちは学校の国語で古文(枕草子、源氏物語、など)を習いましたが、この本に よると英語にも古英語があったのです。

( 教科書では仮装叙想法shouldの意味が説明されていなかった )

ところで、前回の私の高校時代の教科書でも助動詞の章のところで全く 同じ 例文を取りあげています。

It is natural that he should be angry.

そして、「"It...that"の構文で、natural,proper,strange,apity などの あとに続く that-clause に、shouldが用いられる。」とだけ説明されれていま す。24頁

この教科書には、この場合のshouldが使われる理由は全く説明されていません。 これでは、私が高校生の時、この 場合のshouldの意味が分からなくて当然 だったのだなと思いました。

上記の本は随筆とは異なって著者の専門分野の本なので、私にはほとんどの 部分が分からなかったのですが、仮定法すなわち著者の言う叙想法のところは よく分かったのでした。

私の高校時代の英文法の謎は、25年以上も経ってから偶然に書店で出会った 上記の本によって解けたのでした。なお、叙想法という用語は著者が作った わけではありませんでした。この本の中に次のような文があるのです。 「 動詞の変化形という点から考えると、細江逸記博士に従ってとりあえず 叙実法(indicative mood = fact-mood)と叙想法(subjunctive mood = thought-mood)の二つだけを考えればよいであろう。」117頁

この本を読んだ後、随分と時間が経ってから古書店で細江逸記博士の 「動詞叙法の研究」という本を見て買いました。英語の叙想法のことが詳しく 書いているようでした。しかし、あまりにも専門的で、私には難しすぎるのでした。

「英語の歴史」の著者は評判の良い随筆を書くほどの強くて柔軟な筆力を 持っているのでした。その筆力で噛み砕いて書かれた解説を読んだからこそ、 私のような英語の基礎のところを知っているだけの者にも叙想法の意味が分 かったのだ、ということがあらためて身にしみました。

( 高校英語参考書の仮定法の解説は50年前と同じである )

ところで最近、最寄りの町の本屋さんに行ったとき、ふと思いついて高校生 の英語の参考書を見てみたのでした。そして驚きました。どの参考書も 仮定法のところの解説が50年も前の私が使った高校の教科書と同じなのです。

叙想法という用語を使っている参考書は無いのです。一体これはどうしたこと なのでしょうか。

英語は,我々日本人にとって特別に重要な外国語です。日本人は誰もが 義務教育の中学生の時から英語を習います。

そして、日本経済が発達して会社員が英語を使って仕事をする機会も増えて います。現在、超大企業の T 社が会計を操作して批判されることから始まって、 隠れていた巨額の損失が明らかになり、監査法人の証明をもらえないまま 四半期報告書を発表するという信じがたい驚くべき事態が報道されています。

そして、巨額の損失の原因は、アメリカの会社の買収であるというのです。 アメリカの会社の買収ということは、その会社の財務調査や契約書など、 買収のための書類は当然すべてが英語でしょう。

英語の叙想法のことが分からないまま英語で書かれた書類を読むことは とても苦しいことだろうと思います。アメリカの会社の買収を担当する 会社員は学校の英語では特別に優秀な成績を上げてこられた方(かた) だろうと思いますが、現在、書店で売られている英語の参考書を見る限り、 ほとんどの会社員の方は若かった私と同様に英語の叙想法を理解できない ままでいると思われます。

( 英語の叙想法の勉強をお薦めします )

強い記憶力や真面目な努力で覚えた仮定法と、本当に分かって習得した 叙想法では、英文の理解という点で天地の差があります。

日本経済は発展して、日本の会社は今後ますます外国の会社と取引するよう になるでしょう。会社員の方は、上記の本の叙想法のところを読んで学校で 習った仮定法の本当の意味を理解されることを強くお薦めいたします。

スタンダード英語講座 第3巻 英語の歴史

新品価格
¥2,160から
(2017/6/28 13:36時点)

(了)